基礎的研究結果を基に、この効果が犬の認知症に対して、いかなる作用を示すか、1例ではあるが西荻動物病院にて検討を試みた。
漢方薬は(株)カネボウの人参養栄湯を用いた。
症例は17歳齢の雌の雑種犬、体重17.7㎏で眼疾患を併発し、失明状態であった。
認知症の症状としては夜鳴き、徘徊、異常食欲、異常行動などを示し、飼い主の呼びかけにも鈍い反応を示していた。
カネボウ人参養栄湯エキス製剤1.5gを1日2回朝晩投与した。
投与開始後50日頃から、夜中の徘徊行動、夜鳴き行動が少なくなり、食事行動も改善し始めた。
60日以降になると呼びかけにも応答するようになり、食事も1日2回で満足し、また散歩を要求するなど生活のリズムも安定してQOLの明らかな改善が示された。
それらの症状をスコア化した(図1)が、生活リズムの改善の様子を感じ取ることができる。
1例だけの結果ではあるが、さらなる今後の研究に期待が寄せられ、人参養栄湯の人と家畜における認知症の予防、治療に新たな臨床応用が期待される結果であると考えている。