漢方薬は、作用の点から幾つかのカテゴリーに分けられている。
その中の1つで、生体の機能低下に対して有効性を示す“補剤”と呼ばれる一群の処方がある。
“補剤”とは生体機能の賦活を目的とした一群の漢方薬で、これらの薬剤は現代医薬品には存在しない範疇のもので、漢方特有のものといえる。
虚弱体質の改善、老化による機能低下の改善、薬剤による機能低下の改善を図る薬剤群である。
消化機能、免疫機能、呼吸機能、腎機能、性腺機能等の低下に対して、生体機能の低下改善、低下防止などの作用が考えられている。
臨床的には、消化吸収機能の賦活と全身の栄養状態の改善を通じて、生体の防御機能の回復を図り治療を促進し、「抗病反応を賦活する」効果が期待されている。
人参養栄湯と十全大補湯の原典は「和剤局方」の‐諸虚門‐「久病虚損」に書かれており、慢性疾患で様々な生体機能の低下、障害を受けている状況で、非常に体力が落ちて、「気、血」が足りない「気、血両虚」の状態に使われる両虚を補う‐補気補血薬‐として処方される漢方薬である。
また、「気」が足りない「気虚」の状況では「気」を補う‐補気薬‐を、「血」が足りない「血虚」の状況では‐補血薬‐を用いる。
「補気」剤としてよく用いられる処方に「補中益気湯」がある。
これは「中を補い、気を益する」、すなわち消化管機能の改善を図り、食欲の改善、消化管の炎症などを抑え、消化吸収機能を改善することで生体の機能改善を図る作用があるとされ、頻繁に用いられる処方である。