サフランは、ヨーロッパ地中海地域で紀元前から香辛料として、またハーブとして用いられ、我国でも明治時代には既に婦人病薬として「サフラン湯」などの家庭薬に配合されて用いられてきた。
このためサフランと言えば婦人病薬という強力なイメージができあがり、これが他の用途に用いることを阻害してきた面も否定できない。
しかし、サフランには、婦人病以外の多くの薬能があり、最近になってその薬能が1つ1つ臨床治験により検証されてきている。
今回はこのサフランを取上げ総説することでサフランの新たな側面を発見していただきたいと願います。
サフランの活血化瘀作用の解明のため、凝固・線溶系と血管拡張作用を指標に実験を行い、サフランに血小板凝集抑制作用と血管拡張作用を認めた。
易中華らの報告では、in vitro,in vivoのいずれにおいても血小板凝集抑制作用が認められた。
煎剤に血圧降下作用、呼吸興奮作用が、水浸剤に強心作用が報告されている。
ステップスルー、ステップダウン試験により、サフランエタノールエキスの正常およびエタノール惹起学習・記憶障害マウスの学習と記憶に対する作用を検討した。
この実験からエタノールによって障害を受けた学習と記憶過程を改善し、かつ鎮静作用も有することが推測された。
またエタノールによる海馬長期増強の抑制に拮抗する。
この作用の活性本体は、crocinであり、crocinの作用にはその構造上の糖鎖が重要であると述べている。
子宮興奮作用が立証されている。
倪学斌の報告では、その子宮興奮作用の強さは、煎剤>エタノール抽出物>精油成分>エーテル抽出物の順であった。
α-crocetinに、利胆作用、血清コレステロール低下作用と脂質代謝改善作用が報告されている。
抗ストレス作用、抗疲労作用、恒常性の維持作用の活性成分として、managicrocinが報告されている。
朱伝義の報告では、サフランの70%エタノール浸剤〔生薬量(g):浸剤(ml)=1:1〕のLD50は、経口投与で、11±2.2ml/kgであった。
倪学斌の報告では、サフランの経口投与におけるLD50は、20g/kgであった。
本草書をはじめとする古典の記載を整理すると下記のようになる。
特徴としては活血薬として婦人科疾患に用いられるが、涼血作用がある点が他の活血薬(温めるものが多い)と異なるところで、皮膚疾患などにも利用しやすい。
活血化瘀、通経の薬能があり、月経困難、無月経、更年期障害、流産癖に用いる。
止血薬として、子宮出血、月経過多に用いる。
ヒステリー、めないなどの神経性、痙攣性症状に用いる。
(回回薬方)には安胎作用があると記されているが、妊婦には用いない。
心憂鬱積、気悶して散ぜぬものに血を活かす。久しく服すれば精神を愉快にする。また驚悸を治す。
心気驚悸を治す。(飲膳正要)
婦人と子供の神経性および痙攣性症状に用いる。
(ヒステリー、めまい、眼瞼や筋肉の痙攣、嗜眠、百日咳、胃胸痛など)
涼血解毒。麻疹に用いる。
胃を開く。食欲を促進する。
頑固な咳・呼吸不全、肺病、胸膈を広げる。
百日咳、痙攣性咳嗽、鼓腸のような痙攣にアヘンの代用として用いる。
痛風
腰腿痛を治す。(飲膳正要)
頭痛(回回薬方)
止血薬として、鼻出血に用いる。
腎臓病に用いる。
肝経腫硬、中風、口眼歪斜、頭眩、久熱、痔瘡、淋澀、久咳、虚弱、消食、消腫(回回薬方)
長期服用すれば丈夫になり顔色がよくなる。(本草品精要)