中医学と現代医学には、さまざまな点で違いがあります。
(1)未病先防(予防医学)
(2)整体観(バランス医学)
(3)弁証論治(オーダーメイド医学)
まさに、中医学と現代医学の違いのおおもとになる。
中医学にはすべての病気に対する治療の大原則があり、これを「治則」という。
治則には、
・根本治療を目指す「治病求本」
・足りないもの(虚)を補い、余分なもの(実)を捨てる「補虚瀉実」※「瀉」=「捨てる」
・正気を助けて邪気を追い出す「扶正きょ邪」
※「扶」=「助ける・補う」、「きょ」=「追い出す」
・陰陽のバランスを整える「調整陰陽」
・五臓六腑の機能を整える「調整臓腑機能」
・気と血の状態を整える「調整気血機能」
・時により・土地により・人により治療法を考える
「因時、因地、因人制宜(三因制宜)」
病の根源(根本原因)をしっかり見極め、病気の根本治療を目指す。
「治病求本」は、西洋医学にはない中医学の考え方である。
日本人に多い、花粉やハウスダストに反応する「アレルギー性鼻炎」、アトピーや接触性皮膚炎などの「アレルギー性皮膚炎」、「気管支喘息」などのアレルギー性疾患は、西洋医学では主に抗アレルギー薬・ステロイド剤(合成副腎皮質ホルモン)などの内服・外用・吸入剤による対症療法的な治療となります。
西洋薬のいいところは、何といっても、飲めば、塗れば、すぐに効くところ。
ところが、飲み続けなければ、塗り続けなければ、やめた途端、すぐにぶり返す。
「治している」というよりも、ある意味、「症状を隠している」といった方が近いかもしれません。
中医学では「治療求本」といって、どのような病でも根本治療を目指す。
中医学には、「急なればその標を治し、緩なればその本を治す」という原則がある。
「急なればその標を治し」とは、急性の症状がある場合、あるいは、症状が本人にとって非常につらい場合は、とりあえず表面に表れている症状を取り除く=これを「標治」と言う。
標治をした後に必ず「本治(根本治療)」をして、病がぶり返さないように根本原因を治療する。
慢性疾患の治療では、初めから原則的に本治を施すことが多い。
上記のアレルギー性皮膚炎の場合、赤み・かゆみが強い急性期は、まずは熱を冷まし痒みを取り除く=その標を治す。
さらに、赤みやかゆみを引き起こす根源(根本原因)を明らかにし、根本から治す(その本を治す)ことが治療の目標となる。
漢方薬や養生法により体質改善が進めば、同じような皮膚病をぶり返さずに済むようになる。
体質改善をしない限り、抜本的な改善策がないアレルギー性疾患は中医学の代表的な得意分野と言える。
臨床では、「標本同治」といい、表面上の症状への対処を根本原因の治療を同時に行うことが多いです。
不妊症・月経不順などの婦人科疾患においても、同じことが言える。
西洋医学では、合成ホルモン剤を内服薬・吸入剤・注射剤により外部から足す。
中医学では、必要なときに、必要なだけ、必要な種類のホルモンを、内部から自力で生み出せるような身体づくりを目標に治療する。