コレステロールを考える(2)

コレステロールを考える(2)

コレステロールとはなにか?なぜコントロールが必要なのか

本来の役割は細胞膜やホルモンの材料

コレステロールというと、有害なものというイメージがありますが、実は体中のどこにでもある大変重要な成分です。
私たちの体は約60兆個の細胞からできていますが、コレステロールはこの細胞の外壁にあたる細胞膜の材料として使われています。
私たちの体の中には100~150g程のコレステロールがありますが、ほとんどは、細胞膜の材料として使われるためにあります。
さらには、ステロイドホルモンを作る材料にも使われています。

コレステロールが多すぎると虚血性心疾患の危険因子になってしまいます

コレステロールは、このように体にとって不可欠の成分ですが、血液中のコレステロールが多すぎると、動脈硬化を起こしやすいことが明らかにされています。
コレステロールの高い状態が長い年月にわたって続くと、動脈の内壁に少しずつコレステロールが沈着し血管が次第にふさがっていくのです。
体内にはいたるところに動脈がはりめぐらされていますが、コレステロールが高い状態が続いた場合、最も動脈硬化をおこしやすいのは心臓の血管です。
心臓に酸素や栄養を供給している血管が、動脈硬化でつまってしまう結果起こる心疾患を虚血性心疾患といいます。狭心症や心筋梗塞はその代表です。
高コレステロールに、高血圧、過度の喫煙などの要因が重なると、虚血性心疾患がさらに起こりやすくなることから、これらを虚血性心疾患の3大危険因子とよんでいます。

虚血性心疾患を防ぐためには、その最大の危険因子であるコレステロールを、うまくコントロールする必要があります。

供給過剰になりやすいコレステロール

コレステロールの収支バランス  体内で合成約80%   食物から吸収約20%  体内のコレステロール量  胆汁酸  排泄

体内のコレステロールには2つの供給源があります。食物に由来するものと、体内で合成されたものです。食物によるものは全体の2割程度で、合成されたものが8割でほとんどを占めます。
体内のコレステロールのうち利用されなかった余分のものは、いったん肝臓に回収された後、胆汁酸という胆汁の成分に作りかえられてから十二指腸へ分泌され、糞便を経て排泄されます。
これら、入ってくる量と出ていく量との間にうまくバランスがとれていれば、コレステロールは高くなりません。
コレステロールが高くなるのは、①コレステロールをたくさん含む食品のとり過ぎ②体内でのコレステロール合成の過剰③胆汁酸の排泄不良、これらのうちどれかが、時にはいくつか組み合わさってその原因になります。
私たちをとりかこむ食生活環境は、コレステロールを多く含む食品の割合が年々高くなる傾向にあり、逆に胆汁酸を排泄する働きのある食物繊維をたくさん含む野菜・海藻類などは不足しがちで、ともするとコレステロールは供給過剰に傾きがちです。
健康診断などでコレステロールが高いことをしてきされた場合は、コレステロールを多く含む食物を偏食していないか、野菜・海藻類などが不足していないかなど、毎日の食生活を医師の指導のもとにチェックしてみる必要があります。

コレステロールにも善玉と悪玉がある

肝臓 コレステロールの集配基地
A 体内で作られるコレステロールの大半は肝臓で合成されています。
B 食物から吸収されたコレステロールはいったん肝臓に集められ貯蔵されます。
C コレステロールを輸送するタンカー、リポ蛋白
D コレステロールの回収/コレステロールの供給
E 悪玉コレステロール(供給用タンカー)/善玉コレステロール(回収用タンカー)

コレステロールは水に親しみにくい油なので、そのままのかたちでは血液中をスムーズに移動できません。そこで、水に親しみやすい蛋白にくるんだ形で血液中に送り出されます。油(リピッド)が蛋白に包まれているので、「リポ蛋白」とよばれます。これは、石油を満載して海洋を行くタンカーに例えられます。
このタンカーには、体内各部へコレステロールを供給するためのものと、逆に体内各部にたまった余分なコレステロールを回収してくるものと、大きく分けて2種類のものがあります。
同じコレステロールでも、供給用タンカーに積み込まれているものは多いほど動脈硬化を促進するので「悪玉コレステロール」、回収用タンカーのものは多いほど回収が進んでいることを意味するので「善玉コレステロール」と呼ばれます。
検診などではかられる総コレステロール値は、善玉と悪玉が合計された値です。量的には悪玉が善玉の5倍以上を占めているため、総コレステロールを計ればだいたい悪玉の動きを察知できますが、善玉コレステロール(HDL-コレステロールという)を測定することにより正確に分かります。
動脈硬化を防ぐために、悪玉を減らし、善玉をふやしたいのですが、そのためには、①肉・卵類をへらし魚類を増やす②大豆などの植物性蛋白を多くとる③適度な運動を欠かさないこと④タバコはひかえめにする(1日5本以下)などが効果的ろされています。また⑤お酒も適度であれば善玉を増やすことが分かっています。

望ましい血清コレステロール値は220mg/dl以下

肉食中心で平均血清コレステロール値の高い欧米では、虚血性心疾患が死亡原因の首位を占めています。このため、血清コレステロール値と虚血性心疾患の関係を調べる大規模な研究が世界各国で行われてきました。
日本においても虚血性心疾患が増加傾向にあります。昭和60年には心疾患による死亡率は脳卒中を抜きました。
最近日本でおこなわれた1万人以上を対象とした調査でも、血清総コレステロール値が220mg/dl以上になると虚血性心疾患の頻度が高くなることが分かっています。
従来、血清コレステロール値が高くても、すぐに症状がでるわけではありません。動脈硬化は長い年月のあいだに少しずつ進んでいくからです。そして心臓の血管が75%以上ふさがった時にはじめて症状があらわれてくるのです。
虚血性心疾患が非常に多かったアメリカでは、1970年代の初めから食事指導などをはじめとする国家的キャンペーンを行ない、虚血性心疾患を大幅に減らすことに成功しています。
日本においても、脳卒中の死亡率が大幅に減少しているのは、その主原因である高血圧に対する認識が国民一般に広く浸透してきたことが大きな要因になっています。
これと同じように、私たちひとりひとりが食生活とコレステロールへの認識を深めることにより、虚血性心疾患の増加にはどめをかけることが可能になります。

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