頭首のツボ(2)

頭首のツボ(2)

前頂(ぜんちょう)

「頂」は頭のてっぺん、「前」は百会のまえを指しています。
これは、ツボの場所がそのままツボ名になっているわけです。
後頭部にある後頂というツボに対して「前」という意味でもあります。

[治療の効果]

かぜによる頭痛、めまい、顔の腫れによく効きます。
前頭部が重苦しく感じられるときは、左右の中指と人差し指をそろえて前頂に置き、かなり力を入れて頭の芯に圧力がかかるように指圧します。
こうすると頭の重苦しい感じがとれ、気分がすっきりしてきます。
鼻がつまって頭が重苦しく感じるときなどにも用いられることがあります。
また、血圧が高いときのさまざまな症状、たとえば、顔面の充血、腫れ、からだのむくみなどにも効果があります。

天窓(てんそう)

東洋医学では人体を天・地・人と三つの部分に分けて区別することがあります。
この分け方に基づくと、天窓の「天」は鎖骨より上を指します。
「窓」はまどで、この窓から天の部分の病気をのぞきうかがうことができるという意味になります。

[治療の効果]

一般的には耳の病気によく効くツボです。
中耳炎、耳下腺炎、扁桃炎の腫れ、頚肩腕症候群など、さまざまな症状にも用いられます。
さらに、頬のこわばりや腫れ、のどの痛み、耳鳴り、難聴、肩の痛みなどが首の後ろ側にひびくようなときにも効果があります。
ただし、天窓を指圧するときは、急に強く刺激を与えるのではなくて、人差し指か中指でゆっくりと、力の入れ過ぎに注意しながら押すようにします。

天容(てんよう)

「天」は天窓のところで説明したとおり、鎖骨より上の部分のことです。
「容」は、ものを入れる・つつむ・盛る・用いるという意味があります。
したがって、天容とは、耳やのど、頭や歯など、鎖骨より上の部分の病気の痛みを取り除くツボ、また、それらの部分の全ての病気をこの中に包み込んでしまうツボ、という意味になります。

[治療の効果]

頸部の病気の治療によく用いられます。
たとえば、うなじがこって首がまわらない、寝違えて首が痛い、首がこわばる、首の痛みによってしゃべりにくい、というような場合に効果があります。
のどが痛いときは、自分で耳の下あたりのこのツボの周辺を軽くマッサージすると、たいへん楽になります。
さらに、胸が痛い、胸が押しつぶされるような感じで息がしにくい、歯が痛い、耳鳴りがする、耳が聞こえにくいなどの症状にも、効果的です。

承霊(しょうれい)

「霊」は神霊の宿るところ、心の臓のあるところで、神廟とされています。
承霊というツボ名は神霊を受けるという意味で、心臓の疾患に関係して起こる循環器系の症状や、それにともなう症状を処置するということを示しています。

[治療の効果]

脳や脊髄の炎症から起こる発熱をはじめ、まひ、けいれん、めまい、頭痛に効果があります。
ほかにも、かぜによる寒け、頭痛、鼻血や鼻づまり、喘息の治療にも用いられます。
抜け毛防止のために頭皮を刺激する際にも、このツボの周辺は大切なポイントになっています。

曲差(きょくさ)

「曲」は、まげる・まがる・ゆがむ・よこしまという意味から転じて、かたはし・角すみを表しています。
一方、「差」という字は、たがい・ちがうなどの意味があります。
曲差というツボ名は、平坦な額から前髪きわに曲がる段差のあるところ、前髪きわにあるツボという場所をあらわしていることになります。

[治療の効果] 

鼻の病気によく効きます。
たとえば、慢性鼻炎やアレルギー性鼻炎、蓄膿症による鼻づまり・鼻閉に効果があります。
鼻血や鼻たけの治療にもこのツボを使います。
とくに鼻づまりの治療には曲差のほかに天柱、風池、迎香、通天などを同時に治療に用いると、いっそう効果があります。
そのほかにも視力障害や眼底出血、頭痛、高血圧症にも効果があります。

通天(つうてん)

通天の「通は、とおる・とどく、転じて開く・貫く・過ぎるという意味になります。
「天」は鎖骨より上の部分をあらわす天部の頂上・頂点・頭のことです。
すなわち天部のすべてに通じる穴であるというのが通天のツボ名の由来です。
経脈はこの通天から頭のてっぺんに通じ、脳の中を循環するといわれており、通天というツボ名はその働きをぴったりあらわしていることになります。

[治療の効果]

たいへん応用範囲の広いツボで、さまざまな治療効果があります。
とくに、頸部にこぶ状のできものができたとき、鼻の中にできものができたとき、鼻汁による鼻閉のときは、このツボで治療するとたいへん効果が期待できます。
そのほか頭痛・頭重の治療にもよく用いられます。
なかでも片頭痛にはとくによく効き、さらには後頭部からうなじにかけてのこわばりをほぐす特効ツボとしても活用されています。
また、抜け毛や円形脱毛症、脳卒中が原因で起こる顔面のまひの治療にも用いられます。

しん会(しんえ)

[治療の効果]

脳貧血によるめまい、立ちくらみ、のぼせ、またはのぼせによる鼻血などの治療に用いて効果があります。
また、顔の腫れやむくみ、頭痛・頭重のほか、鼻づまりなど、頭部や顔面のさまざまな症状をやわらげます。

神庭(しんてい)

神庭の「神」は、精神の神をあらわしています。「庭」は文字どおり、にわの意味があります。
したがって、額から髪の毛に入る庭先にあたるという位置を示し、精神や情緒を安定させるツボという意味をもっています。

[治療の効果]

慢性鼻炎、蓄膿症などの鼻の疾患をはじめ、頭痛、めまい、てんかんに効果があります。
また、眉の上が痛んで上を見ることができないとき、意識を失ったときなどにも、このツボを刺激するとよく効きます。

廉泉(れんせん)

「廉」という字は、いさぎよし・角・側辺・すみという意味があります。
「泉」はいずみ・水源のことをあらわします。
つまり廉泉は、下あごと首の間の角すみにあって、泉のように気のわきたつところという意味をあらわしています。

[治療の効果]

舌の病気によく効くツボです。舌炎、舌の知覚異常・運動まひ、舌がもつれて話しにくい、舌の根元が急に収縮して言葉が出ない、舌が丸まってよだれが流れるなどの症状に効果があります。
また、喉頭炎、扁桃炎、気管支炎などによるせきやたんをしずめるのにも使用されます。
そのほか、ヒステリー性失語症、しわがれ声、唾液分泌過多にも効果があります。

気舎(きしゃ)

気舎の「気」は邪気をあらわしています。
「舎」は家・やどるの意味です。したがって、邪気がここにとどこおり、集まるという意味になります。
邪気とは東洋医学で病気の原因になるものをあらわします。
なかでもこの気舎に集まるという邪気は、胃の病気に関するものなので、気舎はの治療によく用いられています。

[治療の効果]

のどの痛み、首のできものや腫れ、肩から首にかけてのこり、うなじのこりなどによく効きます。
また、気舎は胃腸の機能と関係の深いリンパ節に近いため、胃腸の調子が悪いときに起こるさまざまな症状にたいへん効果があります。
さらに気舎のあるところには、迷走神経が通っています。
迷走神経は脳から首、気舎を通って胸、腹部へと続いており、気舎への刺激が迷走神経を刺激し、胃の調子をよくしてくれるのです。
胃のもたれや不快感、吐き気、嘔吐、胸やけ、ゲップなどの症状があるときにこのツボを刺激すると、迷走神経が刺激され、症状がおさまってきます。
慢性的な胃弱の治療、しゃっくりにも使用されます。

 

 

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