国立感染症研究所の疫学調査では、2010年度に確認された腸管出血性大腸菌感染報告では、O-157が2732例、O-26が564例、O-111が85例とO-111の感染報告はO-157に比べごくわずかとなっています。
しかし今回富山、福井両県の飲食店で食事をした方のうち4人が、腸管出血性大腸菌に感染して死亡した集団食中毒で、O-111による食中毒の大規模な発生が懸念されています。
死亡した4人の方はいずれも溶血性尿毒症症候群(HUS)となり、重症化していた事から、HUSの臨床病態を交えて、腸管出血性大腸菌への対策について説明します。
ほとんどの大腸菌は、ふだんから腸管の中に住み着き、他の無数の菌とも仲良くやっている穏健派です。
しかし、中には腸炎を起こさせたり、腸管内に侵入して潰瘍を発生させたり、毒を作って激しい下痢や出血をさせたりするものがあります。
これを「病原性大腸菌」といいます。腸管出血性大腸菌はその病原性大腸菌の一つであり、腸管から出血を引き起こさせることもあるので「腸管出血性大腸菌」といわれています。
大腸菌は0抗原と呼ばれる菌の成分で分類されていて、腸管出血性大腸菌というのは0抗原の111番目という意味です。
現在は約180種類ほど分類されています。
特徴的な前駆症状はありません。
鼻水・咳が出る、悪寒がする、発熱など風邪の症状と同じです。
その後、みぞおちから右腹部の強い痛みと水溶性の下痢が起こります。
出血を伴う激しい下痢がある場合には急速に医師の診断を受け、指示に従って下さい。
乳幼児、子供や高齢者では重症に至ることがあるので特に注意が必要です。
成人では軽い症状の場合が多いようですが、体調によっては重症に至る場合もありますのでやはり注意して下さい。
腸管出血性大腸菌は「ベロ毒素」という物質を産生し、この物質が強い毒性を示します。
この毒素は法定伝染病である赤痢の原因菌「赤痢菌」がつくる志賀毒素とほぼ同一のものです。
この毒素は、激しい下痢を引き起こすばかりでなく、「溶血性尿毒症症候群(HUS)」と呼ばれる急性腎不全を引き起こし、患者を死に至らしめることがあります。
腸管出血性大腸菌に感染した人の6~7%がHUSになるといわれています。
主に病原性大腸菌が作るベロ毒素(細胞のタンパク交情である60Sリボソームを破壊する毒素。
タンパクを作れなくなった細胞はやがて死に至る)が腸上皮細胞を破壊して血中に入り、特に腎臓の糸球体血管内皮細胞を破壊することで微小血管内に血栓ができ、並行して急性腎不全となり、尿毒症を発症する病態を指します。
ベロ毒素は細胞表面のGb3レセプターを介して細胞内取り込まれ、細胞を破壊します。
Gb3レセプターは主に赤血球膜、リンパ組織、腎上皮、腸上皮や大脳、小脳、脊髄に発言しており、これらの細胞がベロ毒素の標的となります。
赤血球の溶血に伴う血液凝固系の活性化による血小板減少症と溶血性貧血、そして急性腎不全を3主徴としています。
下痢などの初発症状が発現してから、数日から2週間以内(多くは5~7日後)に、発症することが多いとされています。
さらに神経系にもGb3レセプターが発現していることから、ベロ毒素による神経系の障害や脳症が起こる可能性があります。
発症後は尿毒症の治療として血液透析を行い、血中電解質の濃度を保ち、腎機能の回復を待つことになります。
HUSの2~5%が急性期に死亡して、HUSの5~10%が慢性腎不全に移行すると報告されています。
食中毒は初夏から初秋にかけてはっせいします。
国立感染症センターの報告では、腸管出血性大腸菌の感染率は2010年度では5月第2週から増加し、7月の第3週をピークに9月の第5週まで高発生率を維持しています。
これは大腸菌が増えるのに適した温度だからです。
この時期は特に注意しましょう。
回腸では空腸と異なり、繊毛の長さに大きな差は見られなかった。
(FK投与群:平均200μm、対照群:平均190μm)
しかしFK投与群では繊毛密度が密になる傾向が認められた。
パイエル板では、対照群が空腸よりさらに未発達なのに対し、FK投与群では空腸より未発達ではあるが、対照群に比べ明らかな組織の発達が認められた。
対照群の繊毛の長さが約500μmなのに対し、FK投与群の繊毛は約680μmまで成長していた。
これにより繊毛1本あたり、1.86倍の表面積の増加が見込まれる。
対照群のパイエル板は未発達で小さく、数も少ないのに対し、FK投与群のパイエル板はドーム部分、胚中心、濾胞関連上皮がしっかり確認できるほど発達しており、数も多い。