腸管出血性大腸菌と治療法

腸管出血性大腸菌と治療法

治療法

治療法は?

残念ながら治療法は確立されていません。
腸管出血性大腸菌が産生する毒素に対して特異的に結合中和するモノクロナール抗体や中和剤の開発が進められていますが、まだ実用化されていません。
しかし乳酸菌製剤等の投与については、国内外において有効であるとの報告が行われています。
(厚生労働省「一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌感染症治療の手引き」より抜粋)。
抗生物質や下痢止めを使用すると症状が悪化することがあります。
下痢の症状がある時は安静にして水分の補給や消化しやすい食事にして下さい。

腸管出血性大腸菌による感染症は「指定伝染病」になりましたが、「隔離」については除外されています。
これは病原性大腸菌が空気感染はしないこと、適切な消毒で充分に感染を予防できるからです。
ですから、無用の不安・偏見などで患者さんを差別することは決してしないで下さい。

腸管出血性大腸菌に対抗するには

現在のところ、治療法は確立されていません。
これまで感染症は抗生剤で治療していましたが、抗生剤で腸管出血性大腸菌を殺すと菌体内から大量の毒素が放出され、その毒素によって患者さんの様態がさらに悪化することが分かってきたからです。
治療法が確立されていない現状では、腸管出血性大腸菌が体内に入らないよう予防することが一番の対策です。

予防法

菌を増殖させない

冷蔵庫に入れても腸管出血性大腸菌は死にません。
しかし、低温では増殖しにくくなるので食品は冷蔵庫で保存しましょう。

食べる前に殺菌する

腸管出血性大腸菌は熱に弱いことが知られています。
75℃で1分間の加熱で死ぬので十分に火を通し、調理後はすぐに食べるようにしましょう。
台所用品は、調理の前後に殺菌を行って下さい。
熱湯を洗面器に入れたとき、2分以内は75℃を保っています。

二次感染を防ぐ

腸管出血性大腸菌に感染した患者がいる場合にはもちろん、発病していない健康保菌者がいる恐れがあるので、すべての家庭で二次感染に気をつけましょう。
以下のことに気をつけて下さい。

1.手をこまめに洗う
逆性石鹸や消毒薬を使って菌を殺すことが望ましいですが、普通の石鹸を使って洗い流すだけで充分です。
共用のタオルは感染源になるおそれがありますのでペーペータオル等を使用して下さい。

2.患者さんを最後に入浴させる
患者さんが入浴した後の浴槽に入ることは避けて下さい。
入浴する程度のお湯で腸管出血性大腸菌は死にません。
また、風呂の水は毎日換えて下さい。

3.糞便に気を付ける
患者さんの使用便は、手洗いのとっ手やドアのノブも消毒するようにして下さい。
患者さんの下痢便1グラム中に数億個の菌が含まれているといわれています。
水しぶき一滴で感染する量が充分入っているということです。
患者さんの下着や衣類の消毒もするようにして下さい。

腸管出血性大腸菌に負けない強い体をつくるには

次の二つのことが重要です。

1.病原菌が定着しにくい腸内環境をつくる
腸管出血性大腸菌が病原性を発揮して下痢や尿毒症を起こすためには、腸管に定着して毒素を送り込まなければなりません。
100兆個もの腸内細菌がきちんと定着していると病原菌は腸管に定着できないのです。
暴飲暴食を避けて体調を整え、腸内細菌叢を正常に保つように心がけましょう。

2.病原菌に抵抗できるように免疫力を高める
腸管出血性大腸菌が腸管に入ってきても、健康な人では一時的に保菌者になるだけでほとんど発病しません。
免疫力がしっかりと保たれていれば病原菌が体内に侵入しても排除することができるからです。
ですから、抵抗力が弱まっている人や幼児などは腸管出血性大腸菌に抵抗できるように免疫力を高めておく必要があります。

FK-23の役割

1.乳酸菌を増加させる
FK-23によって、乳酸菌が100倍以上、ビフィドバクテリウムが100倍以上、ラクトバチラスが1000倍以上増殖します。
そして増加した乳酸菌は、腸管出血性大腸菌が嫌いな乳酸を多量に産生します。
腸管出血性大腸菌は酸に弱いのです。
つまり、乳酸菌は、腸内環境を腸管出血性大腸菌の定着・増殖しにくい状態にする働きがあるのです。
(ビフィドバクテリウムとラクトバチラスも乳酸菌)

2.免疫力を高める
FK-23はマクロファージなどの貧食細胞を活性化します。
貧食細胞が活性化されるということは体内に侵入した病原菌を排除する力が亢進するということです。
これまでの多くのデータからも、FK-23は病原菌に対する抵抗性を亢進させることが証明されています。
ですから、FK-23はを摂ることで、腸管出血性大腸菌ばかりでなく種々の病原菌に対して抵抗力が亢進することが期待できるのです。

この2つの結果は、腸管出血性大腸菌に負けない強い体づくり、つまり「病原菌が定着しにくい腸内環境をつくる」、「病原菌に抵抗できるように免疫力を高める」ということに関係していることがわかります。
健康な人の抵抗力さえあれば、腸管出血性大腸菌は病原性を発揮することができません。

FK-23は、腸内細菌叢や免疫力を正常にする働きがあります。
また、免疫の発達していない子供では免疫力を高めることが期待できます。
このことからFK-23は腸管出血性大腸菌に対する予防に有効であると考えられます。

 

 

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