サフラン(Crocus Sativus) の柱頭
アヤメ科(Iridaceae)の植物で、地中海沿岸からインドに至る地域を原産とし、日本へは江戸時代の1860年代にヨーロッパから伝えられました。中国には唐代(7世紀)に、まずインドから伝わったとされています。
1つの花から、3分枝した柱頭が1つしかとれないため、1g採取するのに60~70の花が必要となり、非常に高価な生薬です。
サフランはヨーロッパ地中海地域において、紀元前から香辛料や染料として、またハーブとして薬用にも使用されてきました。
日本でも、明治時代にはすでに婦人用薬として、「サフラン湯」などの家庭薬に配合されて用いられていました。
ところが、このためにサフランといえば婦人病という強力なイメージができあがり、他の用途に用いることを妨げてきた面も否定できないでしょう。
しかし、サフランには婦人秒に対する以外にも数多くの薬能があり、最近になってその1つ1つが、薬理実験や臨床治験により検証されてきています。
このような状況から、精神神経疾患や皮膚疾患に対する薬能により、不眠やアトピー性皮膚炎など近年増加が著しい疾患にも使用され、よい効果が得られています。
さらには、記憶・学習に関する改善作用や発癌プロモーター抑制作用も報告されており、痴呆症などの老人性疾患や癌に対しても効果が期待されます。
サフランは、日本薬局方に第1版から収載され、中国の中華人民共和国薬典(日本の薬局方に相当)にも収載されています。
大分産のサフランはcrocinの含有量が高く、品質もよいとされています。
活性成分の1つであるcrocinは、極めて不安定で分解性の高いことが知られ、ふるい本草書にもサフランは新鮮なものほどよいと記載されています。このため、保存法の検討がなされており、湿気、空気、光などは遮断し、でき得る限り低温下で貯蔵する必要のあることが明らかにされています。
黄色カロチノイド配糖体crocin(crocetin digentiobiose ester)、その他のカロチノイドとしてcrocetin,crocetin dimethyl ester,carotene,lycopeneが含まれています。
また、苦味配糖体picrocrocin、芳香精油成分safranal,savitol,adenosine,ビタミンB2、脂肪油などが含まれています。
picrocrocinは加水分解によってsafranalを生じるため、古くなったサフランは、苦みが減り芳香が強くなります。
含有量はそれぞれcrocin2%、picrocrocin2%、精油1%、脂肪油10%程度といわれており、中枢系の作用はカロチノイド類、血小板凝集抑制などの循環器系の作用はadenosineが、その大部分を担っていると考えられています。
★発癌抑制作用
★抗ストレス・抗疲労作用
★恒常性維持作用
★抗アレルギー作用
★抗酸化作用
★脂質代謝改善作用
★血中コレステロール低下作用
★子宮興奮作用
★子宮収縮作用
★記憶・学習改善作用
★鎮静・睡眠作用
★線溶活性亢進作用
★血液凝固抑制作用
★血小板凝集抑制作用
★循環改善作用
★血管拡張作用
★血圧降下作用
★強心作用
★呼吸興奮作用
★利胆作用