「だるい人」には「十全大補湯」「補中益気湯」「人参養栄湯」「当帰芍薬散」「清暑益気湯」

「だるい人」には「十全大補湯」「補中益気湯」「人参養栄湯」「当帰芍薬散」「清暑益気湯」

「だるい人」によく効く漢方薬

大山漢方堂薬局では、「だるい人」を治す基本は、漢方薬「補剤」を用いて、気力・体力の底上げをしっかりします。

下記、3つの漢方薬、①十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、②補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、③人参養栄湯(にんじんようえいとう)は、漢方薬「補剤」の代表です。
漢方薬「補剤」とは不足したものを補う漢方薬の総称です。
低下している体の機能を回復させて気力・体力を補うことを目的に使います。
「だるい」という訴えの背景には、生体の機能が低下して、気力・体力が不足した状態が確実にあるので、漢方薬「補剤」の効果大、よく効きます!

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

体力・気力の低下した人の「だるさ」に、よく効きます。
加えて、貧血気味でお肌もカサカサという体全体の衰えのある人の「だるさ」にも、よく効きます。

出典:陳師文編『和剤局方』

男子婦人、諸虚不足、五労七傷、飲食進まず、久病虚損、時に潮熱を発し、気骨脊を攻め、拘急疼痛、夜夢遺精、面色痿黄、脚膝力なく、一切病後、気旧のごとからず、憂愁思慮、気血を傷動し、喘嗽中満、脾胃の気弱く、五心煩悶するを治す。(補虚損附骨蒸門)

腹候

腹力中等度前後。悪性腫瘍治療の補助療法の際には脾胃への納まりがよければ、腹力や腹候にはこだわらずに用いてよい。
これはその他の気血双補薬についても当てはまる。

気血水

気血水のいずれとも関わる。

六病位

太陰病。

脈・舌

脈は沈細弱。舌質は淡白で胖大。

勿誤薬室方函口訣

気血虚するというが八珍湯の目的にて、寒というが黄耆、肉桂(桂皮)の目的なり。
また、黄耆を用うるは人参に力を併せて自汗、盗汗を止め、表気を固むるの意なり(固表)。(浅田宗伯)
気血、陰陽、表裏、内外、皆虚したものを大いに補う、という意味で十全大補湯と名付けられた。(矢数道明)

病名・病態・効能・効果

病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血。

漢方医学的適応病態

気血両虚(元気がない、気力がない、疲れやすい、倦怠無力感、食欲不振、軟便~泥状便などの気虚の症候と、顔色が悪い、皮膚につやがない、頭がふらつく、目がかすむ、四肢のしびれ感、筋肉のひきつりなどの血虚の症候。

構成生薬

黄耆3、 桂皮3、地黄3、芍薬3、川弓3、蒼朮3、当帰3、人参3、伏令3、甘草1.5。
(四君子湯+四物湯+桂皮、黄耆)
効果増強→加紅参→加ブシ

中医学

温補気血(気血双補・温陽去寒)
気血両虚に対して全面的な効能をもつ、急性の失血や極度の衰弱の改善には無理がある。

漢方医薬学湯剤使用経験

①矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』:
諸貧血症・産後・手術後の衰弱・諸熱性病後の衰弱・癰疽の後・痔瘻・カリエス・腎臓結核・瘰癧・白血病・諸出血の後・視力減退・脱肛・子宮癌・乳癌等。
②瀧野一雄編著『改訂新版漢方処方集』
疲労、衰弱、貧血、失血、産後、手術後、カリエス、痔瘻、るいれき、白血病、脱肛、神経衰弱、遺精、視力減退。
或は男子婦人諸虚不足、一切病後に気もとの如く回復せざるもの。
③桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』:
大病後や手術後などの全身衰弱、貧血。カリエス、寒性膿瘍。
貧血性で、気力・体力ともに衰えた場合(食欲不振・下痢のある場合を除く)。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

体力・気力が低下して、目尻や口角が下がり、肩もがっくり落ちていて、時に寝汗をかくような人の「だるさ」に、よく効きます。気力を充実させて「だるさ」をとる漢方薬です。

出典:李東垣著『内外傷弁惑論』、後世『万病回春』補益門

中気不足し、あるいは誤りて剋伐し(誤って強い薬を服し)、四肢倦怠、口渇き発熱して、飲食味なく、あるいは飲食節を失し、労倦身熱し、脈洪大にして煩し、脈微細軟弱、自汗、体倦食少なく。
あるいは中気虚弱にして血を摂むること能はず。
あるいは飲食労倦して瘧痢等の症を患い、脾胃虚するに因りて愈えること能わざる者を治す。

腹候

腹力、中等度かそれ以下。ときに胸脇苦満や臍上悸を認める。

気血水

気血水いずれも関わる。

六病位

少陽病。

脈・舌

中気下陥・清陽不升では、脈は虚大。舌質は淡紅~淡白。
気虚の発熱では、脈は洪大で、沈取すると無力。舌質はやや紅、苔は白。

勿誤薬室方函口訣

①小柴胡湯の虚状を帯ぶるものに用ゆべし。(浅田宗伯)
②津田玄仙(1737-1809)は八つの目標を示した。手足倦怠、言語軽微、眼に勢いがない、口中白沫、食味がない、熱物を好む、臍にあたって動悸、脈散大で力なし。『療治茶談』

病名・病態・効能・効果

消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:
夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症。

漢方医学的適応病態:脾胃気虚の次の症候

①中気下陥・清陽不升。元気がない、疲れやすい、四肢がだるい、動作がおっくうである、立ちくらみ、頭の鈍痛、
眠くなる(特に食後)、頭がボーっとする、汗をかきやすい、息ぎれ、便秘あるいは泥状~水様便などの症候、
あるいは胃アトニー、遊走腎、脱肛、子宮脱、ヘルニアなど。
②脾不統血(気不摂血)。脾胃気虚の症候とともに生じる少量かつ間欠的に持続する出血で、下半身や皮下の出血が多い。
婦人では月経周期の短縮や過多月経が生じ、経血はうすいことが多い。
③気虚の発熱。慢性に繰り返す微熱で精神的、肉体的疲労に伴って発生する。頭痛、悪寒、自汗などがみられることもある。

構成生薬

人参4、白朮4、黄耆4、当帰3、陳皮2、大棗2、柴胡2、甘草1.5、生姜0.5、升麻1。
効果増強→加人参→加附子、全身倦怠感+腎虚=合六味丸、合八味丸

中医学

補気健脾・升陽挙陥・甘温除熱。(補気作用とは抗うつ作用を含む)

漢方医薬学湯剤使用経験

①矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』
結核症・夏痩せ・病後の疲労・虚弱体質改善・食欲不振・虚弱者の感冒・痔疾・脱肛・子宮下垂・胃下垂症・陰痿・半身不随・多汗症・風邪ひきやすき者・虚弱児体質改善等。
②龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』:疲労状態、夏やせ、感冒。
③桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』
胃アトニータイプの者のカゼが長引いて微熱や痰や盗汗のとれない場合。
同様な体質者の肋・腹膜炎、肺結核、慢性副鼻腔炎。虚弱者の痔核、脱肛。
胃腸の弱い虚弱者の病後や術後の体力回復。低血圧症。

人参養栄湯(にんじんようえいとう)

病後や術後の「だるさ」によく効きます。
また、冷えや貧血がある人の「だるさ」によく効きます。
「だるさ」があり、加えて呼吸器系の症状がある人にもよく効きます。

出典:『和剤局方』

積労虚損にて四肢沈滞、骨肉酸疼、呼吸として気少なく、行動喘啜(あえぎすすりなく)、小腹拘急、腰背強痛、心虚驚悸、咽乾き唇燥き、飲食味無く、陰陽衰弱、悲憂惨戚、多臥少起、久しきものは積年、急なるものは百日、漸く痩削に至り、五臓の気竭て、振復すべきこと難きを治す。
また、肺と大腸がともに虚し、咳嗽下利、喘乏少気、痰涎を嘔吐するを治す。

腹候

腹力中等度前後。
悪性腫瘍治療の補助療法の際には胃腸への納まりがよければ、腹力や腹候にはこだわらずに用いてよい。
気血双補薬、心下痞功。

気血水

気血主体の気血水。

六病位

太陰病。

脈・舌

舌質は淡白。脈は沈細弱。

勿誤薬室方函口訣

①頑固な咳嗽が続き、衰弱のために麻黄剤不可、麦門冬湯、半夏厚朴湯、柴胡剤なども不可の場合、『現代漢方治療の方針』
②気血両虚を主とすれども、十補湯(十全大補湯)に比すれば、遠志、橘皮、五味子ありて脾肺を維持するの力優なり。(浅田宗伯)

病名・病態・効能・効果

病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振・ねあせ、手足の冷え、貧血。

漢方医学的適応病態

気血両虚・虚寒。
健忘、眠りが浅い、動悸などの心血虚の症候や、自汗、息切れ、咳嗽、喀痰などの肺気虚の症候に、寒気、四肢の冷えなどの虚寒の症候を伴うもの。

構成生薬

地黄、当帰4、白朮4、茯苓、人参3、桂皮2.5、遠志2、芍薬2、陳皮2、黄耆1.5、甘草1、五味子1。
(十全大補湯の川弓を除き、五味子、遠志、陳皮を加えたもの) 効果増強→不眠大→合酸棗仁湯

中医学

気血双補・安神・去寒・止咳。

漢方医薬学湯剤使用経験

①矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』:
病後衰弱、産後衰弱症、結核症の衰弱。毛髪脱落、顔色光沢なく枯燥、心悸亢進、不眠、健忘症。
②桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』:
大病後や手術後などの全身衰弱・貧血、呼吸器疾患の回復期で、咳・盗汗などの残るもの、その他、貧血性で、気力、体力ともに衰え、健忘・不眠・乾咳などのあるもの。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

冷え・貧血がある女性の「だるさ」によく効きます。

清暑益気湯(せいしょえっきとう)

「夏ばて」による「だるさ」によく効きます。

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