網膜色素変性症【1】

網膜色素変性症【1】

網膜色素変性症とは

網膜色素変性症は、網膜に異常がみられる遺伝性の病気です。
原因となる遺伝子の種類が複数あるので、病態が多岐にわたることが特徴です。
①夜盲、②視野の狭窄、③視力低下が主な症状になります。
進行は極めて緩やかで、数年から数十年かけて徐々に進行します。
網膜の機能回復や、病気の進行を止めたりする治療法は、まだ確立されていません。
ですから、対処療法が中心となります。
日本では、4000~8000人に1人が罹患すると言われています。
(厚生労働省の難病に指定されています)

原因

原因は、光の刺激を電気信号に変換する視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞の中に存在する遺伝子の異常だとされています。
視細胞には、錐体(すいたい)細胞と桿体(かんたい)細胞という2種類がありますが、錐体細胞は、網膜の中心にある黄斑という部分に集中して存在し、明るいところで色を認識します。
桿体細胞は、その周りに多く分布し、色は判別できませんが、光を敏感に感じることができるため、暗いところでの視力を担っています。
網膜色素変性症は、まず桿体細胞が変性し、その後、錐体細胞の変性へと進行することが多い病気です。
遺伝性の病気ですが、遺伝傾向が認められる患者さんは、全体の約半数で、残り半数は遺伝傾向が認められません。
遺伝傾向が認められる患者さんのうち、最も多いのは常染色体劣性遺伝を示すタイプです。全体の35%程度を占めます。
次に多いのが常染色体優性遺伝を示すタイプで、全体の10%を占め、最も少ないのがX連鎖性遺伝(X染色体劣性遺伝)で、これが5%程度です。
現在まで、原因となる遺伝子の一部は特定されていますが、その数は今後さらに増えていくと考えられています。

症状

①夜盲、②視野の狭窄、③視力の低下が、主症状になります。
夜盲とは、暗い所で物が見えにくくなる症状で、桿体細胞が機能を失うことで起こるので、病気の初期段階に見られます。
視野の狭窄は、初期段階で見られることもありますが、通常はある程度病状が進行してから現れます。
視野の中央しか見えなくなることが多いのですが、逆に中央のみが欠けたり、下側だけ残ったりすることもあります。
病気がさらに進行すると視力が低下し、文字が読みにくくなる、物がかすんで見えるといった症状が現れます。
人によっては、まぶしさを感じる、全体的に白っぽく見える、視界で光が明滅するといった症状を訴えることもあります。
発症年齢は、個人差が大きく、子どもの頃から症状を訴える人もいますが、40歳頃になってから症状を自覚する人もいます。
男女の差は、ほとんどありません。

診断、検査

問診による夜盲などの症状や家族歴などの確認と、検査を行います。
検査では、一般的な視力検査に加え、眼底(網膜と視神経、血管などで構成される眼の奥の部分)の状態を調べる眼底検査、帯状の光を目に当てて観察する細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、見える範囲を調べる視野検査、光の刺激による電気信号を調べる網膜電図検査などを行います。
眼底検査では、病気の初期には網膜の色調が乱れることによるごま塩状の変化と、網膜血管が細くなるといった所見がみられます。
中期になるとそういった変化が進行するとともに、眼底周辺部に特徴的な色素沈着が現れます。
後期には網膜の変性が眼底の中心部に及び、視神経の萎縮が確認されるようになります。

治療

現在のところ、網膜の機能を回復させたり、病気の進行を確実に止めたりする治療法は確立されていません。
対症療法として、明暗の感受性を維持する作用があるビタミンA製剤や、神経細胞への血流の障害を改善する循環改善薬などを服用します。
まぶしさの要因となる波長の光をカットする遮光眼鏡や、文字を読みやすくするための拡大鏡、
読みたいページをテレビ画面に映し出す拡大読書器といった補助器具を使用することもよい方法です。。
遮光眼鏡は、明るいところでのまぶしさを軽減するだけでなく、明るいところから急に暗いところに入ったときに感じる
暗順応障害に対して有効で、コントラストをより鮮明にする効果があります。

予防、予後

病気の進行が極めて緩やかではありますが、徐々に悪化していくため、定期的に経過を観察していく必要があります。
現代医学の確実な治療法がないため、矯正視力や視野結果から病気が進行する速度を自分で把握することが大事です。
そこから予測される将来の状況(弱視、失明)に向けて準備していくことが大切になります。
将来的に期待される治療法として、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜などの研究がすすめられています。

解説

網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)は眼科疾患の一つで、
中途失明の3大原因の一つであり、数千人に一人の頻度で起こるとされている。
日本の盲学校では、この病気の生徒が2番目に多い。
長い年月をかけて網膜の視細胞が退行変性していき、主に進行性夜盲、視野狭窄(求心性、輪状暗点、地図状暗点、中心暗点)、羞明(しゅうめい)を認める疾患である。
進行度合や症状には大きな個人差がある。1996年に厚生省から難病指定を受ける。
成人中途失明原因3位と言われていたが、正確には成人中途視覚障害原因3位というのが正しい。
様々な治療法が研究されており、現時点では点眼での網膜神経保護、遺伝子治療、網膜幹細胞移植、
人工網膜などの研究が全世界で行われているものの、根本的な治療法が見つかっていない。
治療法の確立を目指す全国組織として、患者、支援者、学術研究者が参加する日本網膜色素変性症協会(JRPS)がある。
遺伝性疾患であるが、孤発例も多く見られる。
本疾患の遺伝形式には、常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、伴性劣性遺伝の3つのタイプがある。
3000~4000人に1人の割合で発症する。国内には約5万人、世界では150万人以上の患者がいると言われている。

初期には、夜盲を自覚することが多い。
網膜の視細胞には杆体細胞と錐体細胞の二種類があり、この内暗い所でのものの見え方を担うのが杆体細胞で、1つの眼に1億個あり、眼底全体に広がっているが、もう一つの錐体細胞は眼底の中心部分・黄斑部に集中して存在し、その数は600万個程であり、数の多さと範囲の広さで杆体細胞が勝っている為に、確率的に先ず杆体細胞が錐体細胞より衰え易い為だと考えられる。

夜盲の後には徐々に視野狭窄を示す(外を歩いていると急に視界に人が飛び込んでくる、人混みで人によくぶつかる、落としたものを探すのに時間がかかる、など)。
羞明(しゅうめい)に対しては、遮眼鏡(紫外線や網膜に有害とされる青色光線をカットするもの)で対応する。
網膜の中心にある黄斑部に病変が及ぶまでには、長い期間を有するため、末期まで視力が維持されることが多い。一般的には進行は極めて緩徐である。

失明するリスク

同じ病名でも症状や進行速度に大きな差があるのがこの疾患の特徴であり、医師も患者の状況に応じてアドバイスする必要がある。
いずれは失明に至るという表現を見かけるが、これは間違いであり、初発年齢、進行スピードなどにより生涯のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)に大きな違いが出てくる。
幼少時に既に視力低下などをきたしている場合は、30、40代で失明する例もあるが、高齢になるまで視力を保っている例もある。
発症から40年間位までは、約60%が視力0.22以上を保っている。
長い経過の後、社会的失明(視力0.1以下)になる例は多いが、医学的失明(暗黒)になる例は少ない(アメリカのある統計によると0.5%)。
千葉大学では、256人に1人と公表している。

合併症

後嚢下白内障、黄斑浮腫等。白内障は比較的早い段階から発症する。
黄斑浮腫は点眼液や内服などで対応する。
白内障には通常の手術が適用される。
感音性難聴を伴うアッシャー症候群も少なくない。

検査

眼底検査にて、網膜に特徴的な骨小体様色素沈着、網膜血管狭窄を認める。
無色素性網膜色素変性症も存在し、一概に骨小体様色素沈着があるとは限らない。
視野は輪状暗点・求心性視野狭窄を認める。

網膜電図(electroretinography:ERG)のflash ERGにてnon-recordableを示す。
上記三点および夜盲症があれば、ほぼ診断がつけられる。
現在までに明らかに原因と分かっている遺伝子には、常染色体劣性網膜色素変性症では、杆体cGMP‐フォスフォジエステラーゼα、βサブユニット、杆体サイクリックヌクレオチド、感受性陽イオンチャンネル、網膜グアニルシクラーゼ、RPE65、細胞性レチニルアルデビド結合蛋白質、アレスチンなどがある。
また常染色体優性網膜色素変性症ではロドプシン、ペリフェリン・RDS、ロム‐1、X連鎖性網膜色素変性症では網膜色素変性症GTPase調節因子(RPGR)の各遺伝子が知られている。

 

 

 

 

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