鍼灸診断

鍼灸診断

問診

年齢、性別、職業、既往歴、家族歴、現病歴、嗜好、便通、生理等々西洋医学とほぼ同様であるが、東洋医学が証の診断に重点が置かれている故に、患者の自覚症状は、最も重要視される。この中には五味をはじめ、次にあげるような症状の有無に注意する。
又、病は必ず経路の異常を伴うため、経路に沿った痛み、しびれ、緊張感等の訴えは特に見落とせない。
次に、臓腑経路の異常を表わす症状の主なものを列記するが、これ等を適当に問診に組み入れて診断の参考にすると便利である。

1) 木

「木は胸脇痛、心下満を主とし、春、風、弦、涙、目、青、呼、角、怒、酸、筋、視、燥、握、爪に特徴を現わし、木の流注をよく診る」と言われている。

(イ)肝実:怒りっぽく、逆気して時として頭眩、眼球結膜の充血、流涙、腋下から側腹部にかけての痛みや張り。口内が苦み酸味、あるいは口渇。精神不安著しく煩々として安眠出来ない。手足の筋肉の強直、後弓反張、腓腹筋痙攣、耳鳴り、月経不順、陰部の痛み、肝経にそった痛み等々。

(ロ)肝虚:目がかすみ、視力減退、眩暈、目疲れ、両側側胸部から側腹部にかけて筋攣。うつ症の傾向にあり、いつも人から追いかけられているような不安感。陰嚢が引っぱられるような鈍痛、下腹部が張り、頻尿の傾向にあり遺尿し易い。耳鳴り、立ちくらみ、気力減退、性欲減退等。

(ハ)胆実:頭痛、特に側頭痛、頭重、発熱、発汗、口中の苦味。舌が粘り、赤黄の舌苔、酸水の嘔吐、鼓腸、怒り易く勇敢。不眠又は好眠、眩暈、耳鳴り、胸腹側痛等。

(ニ)胆虚:溜息をつき、手足の脱力感あり、目に力が無く、物がかすんで見える。眩暈ありよろめく。球結膜に黄疸、顔面に汚い色素沈着、不眠。力無く煩悶(もだえる)する。舌は白滑で粘るか淡紅。舌苔は少ない。

2) 火

「火は身熱を主とし、夏、熱、暑、洪、汗、舌、赤、笑、言、徴、喜、苦、血脈、歩、焦、憂、面に特徴を現わす。火の流注をよく診る」。

(イ)心実:狂気のように譫語し、顔面赤く、火が燃えるような訴え、時として喜笑して止まない。火の経路が痛み、特に心胸部が針で刺されるように痛む。微熱あり、尿の色は黄赤。吐血、鼻出血、口渇、四肢重く、大便不利。口苦く、舌が赤い。

(ロ)心虚:不安著しく憂愁で驚悸、恐怖の夢多し。睡眠不安、健忘、心中騒然とし側胸部から背部にかけてひきつれて痛む。盗汗等。

(ハ)小腸実:腹痛、特に下腹部痛、あるいは腰背部へ睾丸が引きつけられるように痛む。排尿すると気分が良い。胸苦しく、咽喉痛あり、口中に可能性疾患を生ず。頸が腫れて痛み回わせない。舌は黄で周辺部は赤。

(ニ)小腸虚:偏頭痛、特に後頭部、耳後部痛。耳鳴り、排尿は頻回で不利。舌は薄白。

3) 土

「土は体重筋痛を主とし、土用、湿、緩、涎、口唇、黄、歌、宮、思、甘、肌肉、坐、香に特徴を現わす、土経の流注をよくみる」。

(イ)脾実:筋肉痛、特に下肢の筋肉痛。脱力、筋肉萎縮、萎えて起立出来ない。胸胃部に膨満感あり。腹痛時に臍周囲の間歇的腹痛。皮膚は黄色がかり時に下痢、嘔吐。

(ロ)脾虚:下痢、腹痛、鼓腸、嘔吐著しく、力無く四肢の運動のままならず、唇・皮膚は乾き、疲れ著しいために臥位を好む。四肢が冷え、食物に味がない。

(ハ)胃実:心窩部膨満し痛み、胸やけして止まず、食欲旺盛で肥満。顔面がほてり鼻出血、歯根の腫脹、上歯痛、舌は赤く厚い。特に飲食少なくしてしかも肥る。

(ニ)胃虚:体・腹が冷、下肢特に脛骨外側部が冷える。腹痛、食欲減退著しく四肢が疲れ易い。胃部が膨張し、胃液を吐き、しゃっくり、舌は白滑で舌苔は淡い。

4) 金

「金は喘咳寒熱を主とする。秋、燥、浮、毛ショク、涕、鼻、白、哭、商、悲、辛、皮、伏、腥、咳、毛を特徴とする。金経の流注を診る」。

(イ)肺実:発作性の咳をして上気する。同時に肩背痛、側胸痛あり。咳に粘稠性の痰を喀出し、時に膿性痰を出し、なま臭い悪臭。咽喉痛。鼻出血等。

(ロ)肺虚:慢性の気管支喘息、呼吸困難、慢性の咳嗽、痰は少なく白い。身体が冷たく、冷汗・盗汗をかく。両頬は紅色で色白、声がかすれて痩せる。舌は淡く薄い。

(ハ)大腸実:痔疾、腹膨あり、下歯痛、鼻出血、咽頭の乾燥感、面疔等顔面の急性下痢、裏急後重、時として便秘、膿血便。舌は黄色で乾燥。

(ニ)大腸虚:慢性下痢、肛門脱出、腹痛、腹鳴、腹部膨満あり。但し腹部は柔軟。四肢の厥冷、下歯痛、舌は白滑。苔は少ない。

5) 水

 「水は小腹痛み逆す。冬、寒、沈石、唾、耳、黒、呻、羽、恐、驚、骨髄、志、立、腐、慄、髪を特徴とす。水経の流注を診る」。

(イ)腎実:体全体の浮腫。盗汗をかき、顔色浅黒い。腹部膨満感あり。下痢。胸騒ぎがして恐れる。生殖器痛あり、足底部の燥感。

(ロ)腎虚:腰・背部・下肢が冷え、顔面頭部は逆にのぼせる。疲れ易く根気が続かず物音等に驚き易い。精力減退、インポテンツ、精液精子少なく記憶力低下。声がかすれ、舌下咽喉痛。顔面はどす黒く下眼瞼が黒紫色。

(ハ)膀胱炎:頭痛、後頭痛、項背痛、眼痛・流涙等眼疾患。癲癇、発熱、頻尿・排尿痛等急性膀胱炎症状。尿路結石、下腹部痛等。

(ニ)膀胱虚:腰痛、下肢後側痛、肩こり、後頭痛、背腰下肢の冷え。冷えからくる婦人の頻尿及び排尿痛等。

6) 心包経と三焦経

「心包経は心に同伴するもので相火と言われ、心にほぼ同じと考えてよい」と言われているのでここでは略す。

(イ)三焦実:顔面頭部の煩熱、著しい発汗、耳鳴り、難聴、後頭痛、耳後の腫脹・痛み。胸部膨張感あり呼吸が荒く短い。腹部膨張、舌が乾き、大小便不通等。

(ロ)三焦虚:精神不安定で物事が手につかない。音声が出にくい。呼吸困難、呼吸微弱。腹部が冷え、腹痛、水様性下痢あり腹部圧迫されるのを好む。

 

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