ADHDとアスペルガー症候群

ADHDとアスペルガー症候群

ADHDとアスペルガー症候群について

ADHD(注意欠陥・多動性障害)もアスペルガー症候群も「発達障害」という大きな枠に入っている。
どちらとも知的発達の遅れがなく、症状が似ていたり合併症状もあるため、同じ症状だと間違われることが多くある。

しかし、ADHDとアスペルガー症候群とは、それぞれ主症状が異なり、それによって対処法も異なる。

発達障害は大きく「広汎性発達障害」・「ADHD」・「LD(学習障害)」の3つに区分されている。

日本における発達障害の定義は発達障害者支援法によって決められたものであり、世界健康機関(WHO)の基準であるICD‐10に基づくものである。
アメリカ精神医学会のDSM-5では「広汎性発達障害(PDD)」のことを「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と言う。

ADHDには、①「多動性」、②「不注意」、③「衝動性」 の3つの症状があり、原因はまだ明確にはなっていないが、
脳の前側にある前葉前野付近の働きの障害が関係していると考えられている。

アスペルガー症候群には、①「コミュニケーションの問題」、②「対人関係の障害」、③「限定された物事への興味やこだわり」 の3つの症状があり、
自閉症と同じ自閉スペクトラム障害(ASD)の一種とされている。
脳の前頭葉の下前頭回などの社会的な活動をするための脳の部位に機能異常があるといわれている。

ADHDとアスペルガー症候群の症状の違い

ADHDの症状

ADHDの主な症状は「不注意」「多動性」「衝動性」の3つ。

①不注意:注意力を持続することができない。何かに長時間集中することが苦手で、忘れ物も多い。
②多動性:じっとしていることができず、いつもそわそわと体を動かしていないと落ち着かない。じっと座っていることや黙っていることが苦手。
③衝動性:何かを思いついたら考えずに行動に移してしまう。順番を守れない。怒ると乱暴になって手を出してしまう。

アスペルガー症候群の症状

アスペルガー症候群の主な症状は「コミュニケーションの問題」「対人関係の障害」「限定された物事への興味やこだわり」の3つ。

①コミュニケーションの問題
会話能力は表面上は問題なくできるが、その会話の裏側や行間を読むことが苦手。
明確な言葉がないと言葉をそのままの意味で鵜呑みにしてしまう傾向がある=人の言葉を勘違いしやすく、傷つきやすい面がある。
他人と適度な距離感でコミュニケーションをとることが苦手。
②対人関係の障害
場の空気を読むことが困難、相手の気持ちを理解したり、それに寄り添った言動が苦手。
そのため、社会的なルールやその場の雰囲気を平気で無視をしたような言動になりがち=対人関係を上手く築くことができない。
③限定された物事への興味やこだわり
興味やこだわりが強く、いったん興味を持つと過剰といえるほど熱中し、すごい集中力や記憶力を発揮する。
法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどのこだわりを見せることがある。
その法則や規則が崩れることを極端に嫌う傾向がある=この特性は逆に強みとして活かすこともできる。

ADHDとアスペルガー症候群の大きな違い(行動や場面)

1. 対人関係

■ADHD
遅刻やうっかりミスなど、物事を忘れることが多く人を怒らせてしまう。
アスペルガー症候群とは異なり、他人の気持ちを汲み取ることはできる。
相手と適切なコミュニケーションをとりたいと思っていても、衝動性を抑えることができない。
人が話している最中に、ついかぶせて喋ってしまう。

■アスペルガー症候群
他の人の気持ちを読み取ることが困難=失礼な態度や発言で怒らせてしまう。
会話の細かいニュアンスや行間を読み取ることができない。
会話のキャッチボールが苦手なため、対人関係を築くことが困難。

2. 集中力

■ADHD
限られた興味のあることに対しては、ものすごく集中する。
不注意の症状がある場合は、集中力を持続することができない。

■アスペルガー症候群
興味があるものや好きなことに対しては、こだわりが強いので、何時間でも集中して作業することができる。
同じ行動を繰り返すことで安心感を感じる=好きなものや規則性のあるものに関しては異常なほど集中力がある。

3. 仕事

■ADHD
不注意や衝動性の症状によるケアレスミスが多く、仕事を先送りにして締め切りに間に合わないことがある。
計画的なタスク管理や、同じ作業をずっと続けることを苦手とします。

■アスペルガー症候群
作業の一部分にこだわってしまい、それに熱中しすぎて、他のことに手をつけられない。
人の感情や言葉のニュアンスを読み取ることができない=指示出しを理解できずに困る。
物事に優先順位をつけることができない=一度に複数のタスクがあると混乱してしまう。

4. 計画的に物事を行う

■ADHD
ADHDの人は計画的に物事を行うことが非常に苦手です。
場当たり的な衝動で行動を起こしてしまうため、スケジュールがあったとしてもそれに従うことが困難です。

■アスペルガー症候群
規則性を好むため、計画的に行動を行うことが得意。
急なハプニングやスケジュール変更に対応することが困難。

5. 整理整頓

■ADHD
忘れ物がとても多く、整理整頓は苦手。
注意力が散漫になることが多い=何かをやりっぱなしで、ほったらかしにしたり、片付けられないことが多い。

■アスペルガー症候群
モノに対して強い好みを持つことが多い、モノを捨てることを極度に嫌がる。
散らかっている状態にしか見えない部屋も、本人とっては規則性があり、何がどこにあるかは分かっている。

6. 運動

■ADHD
人によって個人差はあるが、運動に関して、特に苦手ということはない。

■アスペルガー症候群
体をうまく動かすことや、手先を使った細かい動きが苦手。
人とのコミュニケーションに、困難を感じることが多い=チームスポーツが苦手。

7. 感覚の異常

■ADHD
合併症状がある場合もあるが、感覚に対するこだわりはアスペルガー症候群に比較すると少ない。

■アスペルガー症候群
五感のうちの何かがとても敏感で、「感覚過敏」が多く見られる=感覚に対する強いこだわりがある。
(服の肌触りや匂いがいつもの服と異なると、「この服は着ない!」 と強いこだわりを見せることがある。

ADHDとアスペルガー症候群が合併した患者

発達障害は、合併症状があることが多い。
ADHDとアスペルガー症候群に関しても、両方の診断を持っているという人も少なくない。
発達障害は範囲が広く、全てはっきりと区別できるわけではない。それぞれの障害の症状が重なる部分がある。
ADHDとアスペルガー症候群も同じく、似たような症状があり、区別が難しい場合がある。
実際に両方の障害の症状があり、どちらかのみの診断は難しい場合も少なくない。
ADHDとアスペルガー症候群を合併して診断することに問題はない。

障害の診断は難しい。
発達障害の診断は簡単ではなく、二つの障害が合併していたり、似たような症状がある。
障害の症状や原因によって取るべき対応法が異なる。
正しい診断を受け、一人一人の症状に合った対応法を実行する。
ADHD、アスペルガー症候群のどちらであっても、障害の特性を理解し、それに適した対処を行うことが大切。

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