私達は、病気でなければ健康であると考えがちですが、周囲を見回せば、病院で検査をしても異常が認められないけれど、倦怠感や憂鬱感、食欲不振などの症状に悩まされている人を大勢見かけます。
古人はこの半健康、半病人の状態を、「未病」と呼びました。
全ての病気はこの状態を通過し、こういう半健康、半病人の状態が長く続くと、いずれ本当の病気になってしまいます。
薬酒は、病気の一歩手前でその芽を解消してしまうことを本領としたものです。
薬湯は加熱によって失われる成分がありますが、薬酒は加熱しないため多様な成分がそのまま残ります。
また純粋に生薬のみの成分を利用する薬湯と異なり、アルコールの効能が生薬成分の協力によってシャープになります。
そのために生薬の成分と異なった効能が生じます。
ということは同じ処方でも、薬湯にした場合と薬酒にした場合では効能はかなり違ったものになります。
薬酒は、長年の経験に培われた法則に従って作るのが有効であるゆえんです。
成分中にしめるアルコールの量が多いだけに、薬酒の効能の中でアルコールの薬理効果は大きいものがあります。
それは、①消化を助け、食欲増進する。②血液の循環をよくして体を温める。③眠りを助ける。④大脳皮質をマヒさせてストレス解消に役立つ。⑤血中の善玉コレステロールを増加する。
以上に加えて生薬の効能が、渾然一体となっているのが薬酒です。
漢方では、その人の体質を寒と温という考え方で分類します。
寒の体温は温め、温の体質は冷ます方向にもっていくと体質が改善されます。
薬酒は一般に体を温める補養薬が多く用いられ、漢方でいう薬性ではおもに体を温める「温」か、中間の「平」の生薬を用いるのが適しています。
薬酒は半健康状態の、血液循環不良、虚弱体質、体力低下、老化など、体力を補い新陳代謝を高め、免疫力を強めたい人に向きます。
ただし、アルコールの効能上飲まないほうがよい人がいます。
それは病勢が激しく活動中で、熱が出て、機能が興奮状態にある場合です。
たとえば、出血性疾患、炎症性疾患、呼吸器疾患などで、気管支炎、肝炎、カイヨウ、肺結核、口内炎、高血圧症、各種ガン疾患などがそれに含まれます。