天然メシマコブを中国全土から収集、真正メシマコブの同定に成功
前述のようにメシマコブは菌糸体の成長が非常に遅く、栽培が極めて困難なキノコである。菌糸体の培養には成功はしたものの、子実体の栽培までには至らず、今なお多くの研究者が試行錯誤しつつ研究に没頭しているのが現状である。
こうした中で、「栽培ができないなら天然物を探せばいいのでは」と、いわゆる逆転の発想で天然物のメシマコブを探し始めたのは、ツムラグループの日本生薬(株)だった。
絶滅が危惧されている日本とは違い、漢方の故郷である広大な中国なら、きっと天然のメシマコブがあるはずだ、というロマンにも似た固い信念を胸に、中国の全土から、メシマコブとして流通している十数種類に及ぶキノコ(いわゆる桑黄)を集め、ツムラの漢方生薬研究所で同定を行った。
その結果、熱き思いは見事に結実し、晴れて真正のメシマコブの同定に成功した。これは、33年ぶりの快挙として大きなニュースにもなった。
一般に担子菌類は、胞子が発芽して一次菌糸(n相)となり、菌糸同士が和合性の関係であれば、菌糸吻合(アナストモーシス)を起こして二次菌糸(n+n相)となる。
栄養菌糸体の主体は、この二次菌糸であり、タンクによる深部培養は、通常、二次菌糸で行われる。
この二次菌糸に何らかの刺激が加えられると、菌糸は栄養生育期に転換し、子実体が分化する。
この子実体の一部、子実層の担柄と呼ばれる所で、菌糸内の核が融合して二倍体(複相、2n相)の細胞が生じる。
この細胞が減数分裂を行い、n相の胞子が形成される。
キノコを巡る話題には、よく「菌糸体か、子実体か」ということが付きまとう。
メシマコブについても例外ではないが、子実体と菌糸体の違いについて少し触れてみたい。
キノコの胞子には雌雄に似た区別があり、発芽してプラスの一次菌糸とマイナスの一次菌糸が合体して二次菌糸をつくり、二次菌糸が密集して結束して子実体となる。
この子実体が、一般的にキノコと呼ばれているものである(子実体を形成しないキノコもある)。
一次菌糸を人工的に培養するのが菌糸体培養で、菌糸体培養品は自然産の子実体とは栄養成分や性状が異なる。
また、菌糸体培養品は、エキスを抽出する場合、培地も菌糸も一緒のまま抽出されるので、どうしても不純物が混入しがちとされる。
日本生薬提供:きのこ健康読本3 シリーズ健康の科学No.10 掲載記事のご紹介