多忙になると腹痛、下痢をしやすくなるというE氏。
Eさんは30歳のサラリーマン。
スマートな人で真面目、神経質そうな印象でした。
数年来、多忙な時期になると便秘と下痢が交互に起こり、大便が出た後もすっきりしないということです。
「最近は毎日のようにおなかが痛み、軟便、下痢で苦しみ、冷たい物をのむと悪化する」と大変困っている様子でした。
桂枝加芍薬湯を調合して飲んでもらいました。
一週間後には「おなかの痛みや下痢、残便感がすっかりなくなりました」と驚いていました。
桂枝加芍薬湯は、過敏性腸症候群に即効性があり、しかも西洋医学の鎮痙剤のような、口渇、便秘などの副作用のない、飲みやすい漢方薬です。
ストレスによって起きる体の不調は心身症と呼ばれますが、特に胃腸は心理的原因の影響を受けやすいことが古くから知られています。
「断腸の思い」という言葉があります。
はらわたのちぎれるほどの悲しみを、表現したものです。
そのルーツは意外に古く、大漢和辞典に「普の桓温が山峡を過ぎたとき、その従者が猿の子を捕まえた。
母猿がこれを気遣って哀号し、追行すること百余里、遂に悶死してしまった。
その親猿の腹を割いてみると、腸がずたずたに断ち切れていた」という話が載っています。
兼好法師の徒然草にも「もの言わぬは腹ふくるるわざ」とありますが、これは心理的原因で腹が張ることでしょう。
また、関が原の戦いのときに、東軍の将、石田光成が、下痢に苦しんだという逸説は有名で、時代小説にしばしば登場します。
漢方医学の中でも江戸中期の医師、香川修庵が、心理的原因により腹痛、下痢、便秘が起こると述べています。
このように心理的ストレスにより便通異常が起こる過敏性腸症候群は、新入社員などによく見られますが、漢方の有用な病気の一つです。
過敏性下痢の患者さんに用いる漢方薬として、桂枝加芍薬湯をご紹介しましたが、その他、体質・症状に合わせて多くの漢方薬が使われています。
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腹部膨満感のある次の諸症:しぶり腹、腹痛
シャクヤク、ケイヒ、タイソウ、カンゾウ、ショウキョウ
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