「お年寄りの諸問題」には「牛車腎気丸」「八味地黄丸」

「お年寄りの諸問題」には「牛車腎気丸」「八味地黄丸」

お年寄り介護の現場で出会う「困った」症状に

主に排泄の問題に使われる漢方薬です。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

お年寄りの頻尿改善に確かな実績。下半身のしびれや痛みにも処方されます。

効能・効果

疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:
下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ

用法・用量

通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

牛車腎気丸はこれらの生薬でできています

ジオウ(地黄)、ゴシツ(牛膝)、サンシュユ(山茱萸)、サンヤク(山薬)、シャゼンシ(車前子)、タクシャ(沢瀉)、ブクリョウ(茯苓)、ボタンピ(牡丹皮)、ケイヒ(桂皮)、ブシ末(附子)

出典 厳用和著『済生方』

・腎虚、腰重く、脚腫れ、小便不利するを治す。

腹候
腹力中等度前後。臍下不仁あり、ときに腹直筋の緊張を認める。

気血水
水主体の気血水。

六病位
太陰病。

脈・舌
脈は沈、尺脈が弱。舌質は、淡白、湿潤。(八味丸に準ずる)

口訣
・この方は、八味丸の証にして、腰重脚腫あるいは、痿弱するものを治す。(浅田宗伯)
・この方は金匱の腎気丸とあれども、即ち、今言うところの牛車腎気なり。目的とするところは、脾腎二蔵の虚にして、小水の通じ悪しく、腹は脹り、腰より下にも水気あるものなり。(浅井貞庵)

八味地黄丸 

高齢で新陳代謝が低下して冷えやしびれを感じている患者さんには八味地黄丸を。

牛車腎気丸と八味地黄丸の足し算・引き算

八味地黄丸にゴシツ(牛膝)とシャゼンシ(車前子)という二つの生薬を加えると牛車腎気丸になります。
どちらもお年寄りの下半身を中心とした問題によく使われますが、牛車腎気丸は冷えや頻尿などの症状が強い人に使われます。

本方で先人は何を治療したか?

・矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
八味地黄丸の作用をさらに増強させてもの。腰痛著しく小便不利のもの。

・桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
八味丸を用いた場合で、尿量減少や浮腫のあるもの。老人性腰痛や糖尿病生神経障害にはことに適している。

ヒント

牛車腎気丸は『金匱要略』の八味地黄丸に牛膝と車前子を加えたものであるので、八味地黄丸とその効能はほぼ重なると考えてよいであろう。
ここに著者の師匠である藤平健先生の八味地黄丸による白内障治療の論稿を、部分的に引用することをお許しいただきたい。
八味地黄丸というと、どうしても藤平先生の御功績を語らないわけにはいかないのである。

先生は老人性白内障に八味地黄丸を病名投与した284例の結果をまとめて、視力の上昇が54.6%、不変26.8%、低下18.6%であったことを日本東洋医学会誌上で明らかにされた。
半数を超える眼で視力が改善し、1/4以上で進行が停止するという結果であった。

著者が大変興味深く拝読したのは、それに続く先生の文章である。
『さて「証に随わずに」老人性白内障という病名だけによって八味丸を投与した私の成績が、「証に随って」漢方(もっともその大部分は八味丸なのであるが)を投与した小倉氏の例と、さほど大きな差がないということは、老人性白内障の場合は、その診断がついただけで、ほとんど証を考慮することなく、一律に八味丸を投与しても大過がないのだということを物語っているのではないであろうか。
これを逆に言うと、八味丸の証を構成する一要因に老人性白内障という一項目を加えても、必ずしも悪くはないのではなかろうか。
このことはまた、漢方の証を構成する要因の中に、西洋医学的な病名、検査成績などが、今後、次ぎ次ぎと組み入れられる余地のあることを示唆するものであると思う。』

今日の洋漢渾然となった医療状況を見越したような言葉である。
随証施治をあれほど心がけられた藤平健先生の言葉であるからこそ、発せられて30数年度の今日もなお千金の重みを持って感ぜられるのである。