重症筋無力症と漢方薬(1)

重症筋無力症と漢方薬(1)

重症筋無力症=神経疾患、末梢神経障害=調合漢方薬服用可能、鍼灸治療併用可能

重症筋無力症とは

重症筋無力症は、神経と筋肉の間の信号伝達が障害される自己免疫疾患で、筋力低下を引き起こす。 
①重症筋無力症は、免疫系の機能不全により起こる。
②通常、まぶたの下垂と複視が起こり、運動後は筋肉の著しい疲労と筋力低下が起こる。
③薬剤を静脈内注射で投与して反応を調べる検査で、重症筋無力症であるかどうかを判断する。
④診断を確定させるには、筋電図検査、血液検査、画像検査が必要になる。
⑤筋力をすみやかに改善できる薬剤や、病気の進行を遅らせる薬剤がある。

重症筋無力症は女性に多くみられ、通常は20~40歳の女性に発症する。
どの年齢層の男女でも起こりえる。まれに、小児期に始まることがある。

重症筋無力症では、免疫系によってつくられた抗体が、神経筋接合部の筋肉側の受容体(神経伝達物質のアセチルコリンと反応する受容体)を攻撃する。
その結果、神経細胞と筋肉の間の信号伝達が妨げられる。
体が自分のアセチルコリン受容体を攻撃する=自己免疫反応がどのような原因で起こるのかは不明。

ある理論では、胸腺の機能不全との関連が考えられている。
免疫系の一部の細胞は、自分の体と異物とを区別する能力を胸腺で獲得する。
胸腺には、アセチルコリン受容体をもつ筋肉の細胞も含まれている。
理由は不明だが、胸腺が免疫系の細胞にアセチルコリン受容体を攻撃する抗体をつくるよう指示する可能性もある。

この自己免疫異常の素因は遺伝することがある。
重症筋無力症がある人の約65%では胸腺の肥大がみられ、約10%では胸腺腫瘍(胸腺腫)がみられる。
胸腺腫の約半数は悪性腫瘍になる。
一部の重症筋無力症では、アセチルコリン受容体に対する抗体はみられないが、神経筋接合部の形成に関与している酵素に対する抗体がみられる。
そのような場合は、通常とは異なる治療が必要になる。 = 調合漢方薬服用可能、鍼灸治療併用可能

この病気は、感染症、手術、特定の薬剤
(高血圧治療薬のニフェジピンやベラパミル、マラリア治療薬のキニーネ、不整脈治療薬のプロカインアミドなど)
の使用によって誘発されることがある。

新生児筋無力症は、重症筋無力症の女性から産まれた子供の12%で起こる。
アセチルコリン受容体を攻撃する抗体は、血流に乗って体内を循環しており、妊婦の胎盤を通じて胎児に移行することがある。
その場合、新生児に筋力低下が生じるが、生後数日から数週間で消える。残り88%の新生児はこの病気にならない。

重症筋無力症の症状

まず、一過性の症状悪化(増悪)がよくみられる。 
そうでないときは、症状は軽いか、まったく現れない。

主要症状

①眼瞼下垂(まぶたが力なく垂れ下がる)
②眼筋の筋力低下による複視
③発症している筋肉を使った後に起きる過剰な筋力低下
④筋力低下は、筋肉を休ませると解消するが、また筋肉を使うと再発する。

40%の人では、最初に眼に症状が現れ、最終的には85%の人で眼の問題が現れる。
15%の人では眼の筋肉だけに障害が起こるが、大部分の人は全身に症状が現れる。
話すことや飲みこむことが困難になり、腕や脚の筋力も低下する。
手を握ったとき、乳搾りのように、握り方の強弱が変動することがある。
首の筋肉も弱くなることがある。感覚の障害は起こらない。

重症筋無力症では、筋肉を繰り返し動かすと筋力が低下する。
たとえば、以前はハンマーを上手に使えていた人でも、数分間打つと力が出なくなる、
筋力低下の程度は時間や日によって異なり、病気の経過も非常に多様である。

筋無力症クリーゼ(症状が急速に悪化する危険な状態)と呼ばれる重度の発作が、約15%の人に起こる。
これは、感染症によって引き起こされることがある。腕と脚に極度の筋力低下が起きるが、それでも感覚は失われない。
呼吸に必要な筋肉に筋力低下が起きることもある。= その場合は命にかかわる。

重症筋無力症の診断

一過性の筋力低下があり、特に眼や顔面の筋肉に症状があるか、症状がある筋肉を使うと筋力低下が強まって安静時に症状が消える場合。
アセチルコリン受容体に異常が生じるため、薬剤を投与して血液中のアセチルコリン濃度を上昇させる検査法が診断の確定に役立つ。
この検査に最もよく利用される薬剤はエドロホニウムで、静脈内注射で投与される。
まず、症状がある筋肉を疲れるまで動かし、続いて薬剤を投与する。
これで筋力が一時的かつ急速に改善した場合は、重症筋無力症の診断が考えられる。

診断を確定するには、さらに診断検査が必要になる。
たとえば、筋電図検査(筋肉を刺激して電気的活動を記録する検査)や、アセチルコリン受容体に対する抗体またはこの病気の人にみられる別の抗体を検出する血液検査などがある。
別の病気の可能性について確認するための血液検査も行われる。
胸部のCT検査またはMRI検査を行い、胸腺について評価する、とともに胸腺腫の有無を調べる。

重症筋無力症の治療

調合漢方薬服用可能、鍼灸治療併用可能

筋力が迅速に改善されるような、あるいは自己免疫反応を抑制して病気の進行を遅らせるような、薬剤が使用される。

アセチルコリン量を増加させるピリドスチグミン(内服薬)などの薬剤により筋力が改善することがある。
朝目覚めたときに重度の筋力低下や嚥下困難がある場合は、長時間作用型のカプセルを夜間に服用する。
薬剤の用量は、定期的に調整する必要があり、一過性の筋力低下が起きているときには増量しなければならない場合もある。
しかし、投与量が多すぎても筋力低下が起きることがあり、病気による筋力低下との区別が困難になる。
また、これらの薬剤は長期間使用すると有効性が低下することがある。
筋力低下が進んでいる場合は、薬剤の有効性が低下している可能性もあり、この病気の治療経験が豊富な医師の診察を受ける必要がある。

ピリドスチグミンでよくみられる副作用は、腹部のけいれんと下痢。 = 調合漢方薬服用可能、鍼灸治療併用可能
これらの副作用に対処するため、アトロピンやプロパンテリンなどの消化管活動を抑える薬剤が必要になる。

自己免疫反応を抑えるために、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬や、シクロスポリンやアザチオプリンなどの免疫抑制薬も処方される。(経口薬)
大半の人は、コルチコステロイド薬を無期限に服用する必要がある。 = 調合漢方薬服用可能、鍼灸治療併用可能
コルチコステロイド薬の服用を開始すると、最初は症状が悪化することがあるが、2~3カ月以内に改善がみられる。
その後は効果が得られる最小限の用量まで減らす。 = 調合漢方薬服用可能、鍼灸治療併用可能
コルチコステロイド薬は長期間服用すると中等度から重度の副作用が起きる可能性がある。 = 調合漢方薬服用可能、鍼灸治療併用可能
そのため、コルチコステロイド薬を中止または減量できるように、アザチオプリンが投与される。
アザチオプリンでは、改善がみられるのにおよそ18カ月かかる。 = 調合漢方薬服用可能、鍼灸治療併用可能

免疫グロブリン(ドナー集団から採取した多くのさまざまな抗体を含む溶液)を、1日1回、5日間静脈内投与する。
3分の2以上の人は1~2週間で改善がみられ、効果が1~2カ月続く。

薬剤で症状が軽減しない場合や筋無力症クリーゼが起きた場合は、血漿交換療法(血液浄化による病気の抑制)が行われる。
血漿交換療法では、フィルターによって血液中から有毒物質(この場合は異常抗体)が取り除かれる。

胸腺腫がある場合は、胸腺腫が広がるのを防ぐために胸腺を摘出する手術が必要である。
胸腺腫がない場合は、胸腺摘出が有益かどうかは明らかでない。