私ごとになりますが、私には妹が一人います。この妹が、高校まではいわゆる肥満児でした。ある日、何があったのか、妹が自分の肥満をかなり気にしだしたのです。そのことを祖父や父が知り、これはいい機会だと、鍼治療と漢方の煎じ薬を飲ませはじめました。
妹は鍼灸も漢方薬も大嫌いでしたが、なぜか言うとおりにしていたようです。祖父と父は、妹に1日おきに鍼治療をして、1日1回、漢方の煎じ薬を飲ませました。これが効いたのか、2週間目くらいからめきめき効果が現われて、2ヵ月後には、まるで別人のようになってしまったのです。その後、妹は以前よりも体調もすごくよくなり、クラブ活動にも積極的に参加するようになりました。彼女は現在も、とくにダイエットに気をつかうことなく、スマートなままでいます。
もう1つ、こんな例もありました。私の高校時代の友人から、ある日、今度結婚するとの連絡が入りました。おめでとうと言うと、その友人は、じつは困ったことがあるといって、婚約者から、「そんなに太ったままじゃイヤ!ハワイで結婚式が挙げられない!友達にみっともない水着姿を見られたくない!」と言われたというのです。
友人は私の妹のケースを知っていたので、自分も何とかしてくれというのです。彼はそのとき29歳、身長167センチで体重は81キロでした。肥満治療専門の医者からアドバイスを受け、食事療法と運動療法のメニューをもらったとのことでしたが、忙しいサラリーマンにはとうてい無理なことで、1週間もしないうちに挫折してしまったそうです。
私はさっそく父に電話をして、治療方法を確認しました。友人は仕事の関係上。妹のようにそうたびたび鍼治療はできないので、耳と肩甲骨付近にあるツボと腎臓の上にあるツボに皮内鍼をする治療法を採用しました。そして、漢方薬は柴胡、半夏、大黄などを含む合計8種類の生薬からなるものを採用しました。
また、友人は毎日駅まで自転車を使って通勤していましたが、これを徒歩にしてもらうことにして、毎日往復約30分間のウオーキングをしてもらいました。それから、彼は1週間に1度、必ず私のところに来て鍼治療を受け、漢方薬を持って帰るようになりました。その結果、友人の体重は1ヶ月で約7キロ減少し、70キロ台前半の体重になりました。これで気をよくした彼は、その後も私の言いつけをよく守り、2ヵ月後にはさらに5キロ減少して60キロ台の体重になったのです。
この時点で私は、鍼治療に関しては継続してよいとしても、漢方薬に関しては、彼の体型に合わせて新しいものに変更しなくてはいけないと考えました。父にも相談し、今度は18種類の生薬を一定の比率で混合したものを採用することにしました。その後、友人の体重はさらに3キロぐらい減少して、ほぼ安定しました。この間、友人は、私の鍼治療とこの漢方の煎じ薬について苦情らしきものはなく、ただ、この煎じ薬を飲むと肩から脇の下にかけて、カァーッと熱くなる感じがすると言い、以前よりも便通がよくなったようだとも言っていました。さらに、以前の食事の半分の量で、十分満足感が味わえるようになったそうです。
以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。