最後に、ボケを予防するための漢方薬の選び方と、食事や日頃の心がけについて、あらためて整理しておきましょう。
ボケはアルツハイマー病と脳血管性痴呆の2つに分けられます。アルツハイマー病は脳細胞自体の病気であり、脳血管性痴呆とは脳の血管の病気です。しかし、どちらもその根底には脳の自然老化現象が大きくかかわっています。したがって、脳の老化を防ぐ(老化のスピードを緩める)ことが第一の要件になります。
脳の老化のうち、脳細胞自体の老化を防ぐには、最大の敵である活性酸素を消去する必要があります。つまり「抗酸化剤」を意識的に摂ることです。そのためには、ビタミンE、ビタミンCを積極的に摂りいれてください。
また、脳の血管の老化を防ぐには、脳血管性痴呆の直接の引き金である動脈硬化を防ぐことが先決になります。これにはいくつかの注意が必要ですが、まず、コレステロール値と血圧値を正常域に保ってください。糖尿病の発症、喫煙、過度の飲酒、肥満は動脈硬化の大敵です。
それぞれの目的に適った漢方薬を紹介します。
A.抗酸化作用のある漢方薬
6種類の生薬で構成された「当帰芍薬散」という漢方薬の強力な活性酸素消去作用が確認されています。
B.脳の血管の老化予防に効果のある漢方薬
黄連(オウレン)、黄ゴン(オウゴン)、黄柏(オウバク)、山梔子(サンシシ)という4種類の生薬を組み合わせた漢方薬には、脳の血流と代謝を促し、健康状態に戻す作用があることが確認されています。
C.コレステロールを調節し、動脈硬化を防ぐ漢方薬
コレステロールには善玉(HDL)と悪玉(LDL)があり、動脈硬化を防ぐためには前者を増やし、後者を減らす必要があります。これらの要素を備えた強力な「コレステロール調節作用」を持つ漢方薬が、中国では宋の時代から現代まで、「不老長寿の秘薬」として知識人たちの間で密かに服用されてきました。「瓊玉膏(ケイギョクコウ)」と「田七(デンシチ)」の2種類のです。前者は現在、地黄(ジオウ)、人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)、麦門冬(バクモンドウ)、天門冬(テンモンドウ)、地骨皮(ジコッピ)という6種類の生薬から構成され、後者には、「デンシチケトン」という成分が含まれていることが確認されています。
D.血圧を正常にする漢方薬
前述の「当帰芍薬散」から、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)という3つの生薬を除き、代わりに、黄耆(オウギ)、地黄(ジオウ)、黄柏(オウバク)、釣藤鈎(チョウトウコウ)という4つの生薬を加えると、強い血圧調節作用を持つ漢方薬に変化することが知られています。
以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。