「健忘」か「ボケ」かは脳細胞死のスピードで決まる

「健忘」か「ボケ」かは脳細胞死のスピードで決まる

脳細胞が自動的に死ぬという現象は、医学的には「廃用性萎縮」と呼ばれる考え方で説明できます。たとえば、学生時代によくスポーツをしていた人が、就職してデスクワークが多くなると、使わなくなった筋肉が自然にやせ細っていくように、ふだんあまり使わない脳細胞が自然に脱落していくというものです。

このような現象は、一般的な日常生活を続けることにおいては、さほど大きな問題にはなりません。けれども、筋肉が細くなってしまったサラリーマンが、昔のようにサッカーや野球をすると、やはり無理が生じてくるのと同じように、いつも使っていない脳細胞から、急に記憶を呼び出すとなるとすぐに思い出せないような現象、つまり物忘れが起こってしまいます。そして、筋肉は細くなっても、また鍛えれば再生しますが、死んだ脳細胞は二度と再生しないのです。

しかし、創造の神は私たちを完全に見捨てたわけではなく、この脳細胞死に代わる代償機能を備えてくれました。すなわち、私たち人間には、脳細胞死に対しても防御システムが備わっています。私たちの脳内では、脳細胞死が起こる一方で、生き残った脳細胞がなんとかしてしんだ脳細胞の肩代わりをしようと、長い突起を伸ばしはじめるのです。そして生き残った脳細胞同士が連絡し合い、脳細胞死により切断された情報伝達のネットワークを修復してしまうのです。

たとえば年齢とともに物忘れをしやすくなっても、時間をかけて思い出そうとすれば可能であい、さほど日常生活に支障を来たさないのもこのシステムのおかげです。また、このような脳細胞の防御修復システムによって、私たちは高齢になってからでも、努力しだいでいくらでも新しいことを学習し、知識を増やすことができます。したがって、ここまで述べてきた物忘れは「健忘」の段階で、脳の自然な老化にともなう「生理的なボケ」の範囲ということができます。

ところが、なんらかの原因で脳細胞死のスピードが加速されたらどうなることでしょう。脳細胞死がゆっくりとした自然老化現象や廃用性萎縮の枠にとどまらず、ふだんよく使っている日常生活に必要な脳細胞にまで及んでしまったらどうなるでしょうか。当然、日常生活い必要な情報伝達のネットワークも切断されることになります。脳細胞も、この危険な状態をすぐにキャッチして、前述した防御システムを駆動させ、別の脳細胞と脳細胞を新たにつないで、切断された重要なネットワークを修復しようとします。が、脳細胞死のスピードがさらに加速されたら、その修復は間に合わず、防御システムに大きな乱れが生じてしまい、もはやネットワークは切断されたままになってしまいます。すなわち、その部分の脳の情報伝達は途切れてしまうことになります。結果として、物忘れが激しくなり、記憶を呼び出すにもいちだんと時間がかかるようになり、さらには記憶は少しずつなくなってしまうわけです。こうなると、「健忘」の段階を通り越して、限りなく「病的なボケ」に近づくことになります。

以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。

目次

プロローグ - ボケずに100歳まで生きるために

第1章 ボケがここまでわかってきた

第2章 脳細胞は自殺する

第3章 老化の原因は「活性酸素」だった

第4章 漢方薬の驚異のボケ防止作用

第5章 病気を未然に防ぐ「養生(ようせい)の法」

第6章 幸せになるための3つの処方箋

エピローグ - ボケを予防する6ヶ条

あとがき-謝辞に代えて

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「脳を守る漢方薬」

エビデンスの解説、紹介
医学博士 大山博行

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