「無意識」の緊張を「意識的」にリラックスさせる

「無意識」の緊張を「意識的」にリラックスさせる

それでは、人間はなぜリラックスすればストレスから心臓を守って突然死を防ぐことができたり、胃腸をはじめ全身の臓器を健全に保って、健康で楽しい長寿を実現できるのでしょうか。この問いには、ジェイコブソン博士の一番弟子にあたるフランク・ヨーゼフ・マクギーガン博士が、次のように説明しています。

ジェイコブソン博士が14歳のときに体験した大火事のように、人間は大きなストレスにさらされると、旧ソ連の有名な生理学者であるパブロフの実験で有名な「条件反射」の原理に従って、自動的に緊張状態が条件づけられてしまいます。緊張状態が強まると筋肉が収縮して、骨格筋を支配している中枢神経系が興奮し、活動が高まります。これにともない、精神的興奮も不必要に高まってしまいます。この状態は、たとえば車のエンジンの空ふかし状態に相当し、思考や認知の仕方も適切ではなくなり、車がガソリンを浪費するのと同じように、私たち人間も生きてゆくエネルギーを浪費してしまいます。

そればかりではなく、中枢神経系の興奮がある閾値以上に高まると、その興奮を「視床下部」が察知して自律神経系に命令を出し、交感神経を興奮させてしまうのです。すると神経伝達物質、ノルアドレナリンの分泌が盛んになり、心臓や胃腸などの支配臓器に命令が四六時中送り続けられることになってしまいます。

また、中枢神経系の興奮も筋肉群へ再度送り返しつづけられ、骨格筋はますます緊張してしまいます。こうなると体中の血管が収縮して、血圧は異常に高くなり、虚血性心疾患を誘発しやすくなります。つまり、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなり、胃腸の具合も悪くなり、精神的にもイライラしてしまうわけです。

さて、ジェイコブソン博士が研究し、開発に成功した「漸進的弛緩法」とは、このようなストレスからくる人間の過緊張状態を正常に戻すという方法です。もう少し説明を加えれば、人間が意識的にコントロールすることができない条件反射や自律神経系(とくに交感神経)の興奮状態を意識的にコントロールして正常状態に戻す方法です。

これはじつは、私たち人間が唯一、自分の意志でコントロールできる筋肉(骨格筋)を使って、緊張状態を正常に戻す方法なのです。つまり、簡単に操作できる筋肉(骨格筋)を意識的に緩める(弛緩させる)ことで、筋肉の誤った使い方、筋肉の誤った悪い習慣を改善して、前述した過緊張状態を正常な状態に戻し、交感神経の異常興奮持続状態(ノルアドレナリンの過剰分泌状態)にストップをかけ、正常に戻していく方法なのです。さらに、これは私の提唱する「養生の法」の奥義でもあるのです。

私の祖父であり、私自身の師匠でもある大山鍼灸の創始者、初代・大山宗伯は、このジェイコブソン博士が開発した「漸進的弛緩法」からあるヒントを得て、自分の鍼灸技術に取り入れ、まったく新しい鍼灸技術の開発に成功していました。つまり、私の持つ「養生の秘法」の1つは、祖父が開発した技術を父が伝承して、さらに改良を加えながら私自身へ伝承されてきた大山家の「鍼灸の秘技」というわけです。ジェイコブソン博士が開発した「漸進的弛緩法」の原理を、東洋医学の鍼灸の手法を使って実現させたもの。といえるでしょう。これを説明するには、優に一冊の本になってしまいますし、なにより伝来の「秘法」であるため、公開はできません。ここでは、筋肉を意識的に緩めてリラックスさせ、無意識の緊張状態を解く方法を自分なりに試してみてください。これを日課にすることで、十分成果は得られるはずです。

以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。

目次

プロローグ - ボケずに100歳まで生きるために

第1章 ボケがここまでわかってきた

第2章 脳細胞は自殺する

第3章 老化の原因は「活性酸素」だった

第4章 漢方薬の驚異のボケ防止作用

第5章 病気を未然に防ぐ「養生(ようせい)の法」

第6章 幸せになるための3つの処方箋

エピローグ - ボケを予防する6ヶ条

あとがき-謝辞に代えて

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著書「脳を守る漢方薬」

認知症、アルツハイマー病、脳血管障害に、光明、最先端科学で、実証された、漢方薬の効果が明かされる。

「脳を守る漢方薬」

エビデンスの解説、紹介
医学博士 大山博行

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