年老いてからでも脳機能が衰えないわけ

年老いてからでも脳機能が衰えないわけ

 私たち人間は、個人個人を見れば、年老いてもますます知性豊かに、脳の衰えをまったく感じさせない人もいれば、反対にボケてしまう人もいます。このことを考えてみても、私たちの脳は、老いてもなお多くの代償機能を持っていて、それをコントロールできているかいないかで大きな差が出てくるということが容易に理解できます。

 この代償機能の鍵を握るのが、ニューロン・ネットワークと呼ばれる脳に特有の情報伝達システムであることは第2章でお話ししました。脳細胞(ニューロン)から伸びた樹状の突起によってネットワークが形成され、たとえ一部の脳細胞が死滅しても、それに代わる回路の働きによって脳全体としては新たな事態に対応できるのです。加齢にともなって脳細胞の数は減っても、それを補う「突起」を伸ばし、増やすことにより、新たなニューロン・ネットワークを形成して機能を再生し、機能を減退させるどころか、さらに増やすことも可能になる秘密はここにあります。 

 人間の脳の機能や病態を研究し、解明するために、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウスなどの実験動物を使用しますが、とくに脳細胞(神経細胞)の機能を研究するためには、これらの動物の胎仔の脳から摘出した組織の神経細胞を培養して実験に使用します。城西大学の研究室に、17日目のラットの胎仔の脳から摘出した大脳皮質の細胞から培養した「ラット初代培養神経細胞」というのがあります。この神経細胞は突起を伸ばし、増やすので有名なのですが、突起を伸ばすところを見せてくれるだけではなく、神経細胞が正常に突起を伸ばすためにいちばん大切なもの、つまり「成長円錐(growth cone)」と呼ばれる秘密の部分まで、惜しげもなく大胆に見せてくれる培養神経細胞です。

 この「ラット初代培養神経細胞」に、「最高の漢方薬」を水に溶かしてフィルターに通し、培地に加えて培養した研究者がいました。その結果、なんと4日間の培養で、この神経細胞が活性化され、神経突起を伸ばし、突起の数をどんどん増やしはじめたそうです。

 また、神経細胞毒(神経細胞骨格毒)と呼ばれる「サイトカラシンB」という毒をこの「ラット初代培養神経細胞」に混ぜて24時間培養すると、神経細胞が突起を伸ばしても相手の神経細胞まで届かず、自分のところにブーメランのように戻ってきてしまう現象が見られます。これはルーピング現象ともいわれ、アルツハイマー病の脳細胞に見られる「神経原線維変化」のような神経突起がよじれて絡むような現象として知られています。同様に、成長円錐がなくなるような現象(成長円錐消失現象)も見られます。ここでもまた、最高の漢方薬を培地に加えると、このルーピング現象が抑制され、さらに神経細胞のいちばん大切な成長円錐も観察されるようになったというのです。

 さらに、このままの状態で10日間培養を続けると、サイトカラシンBという毒を加えた培養神経細胞の神経突起はすべて消失してなくなってしまいますが、最高の漢方薬を混ぜた培養神経細胞のほうは、すべてよい状態とはいえないまでも、神経突起を伸ばしていたということです。つまり、最高の漢方薬には「脳細胞の突起を伸ばし、増やす作用」と「障害を受けた脳細胞の修復・防御作用」が確実にあるということになります。また、その結果として「死滅した脳細胞の機能を再生する作用」がある、ということもできるでしょう。 

 脳細胞は大きく分けて「細胞体」と、そこから伸びている「突起」からできています。そして、細胞体は、情報伝達という突起の機能を保持するために働いています。 

 いくつかの例外はありますが、体の細胞は生まれた後でも、必要に応じてさかんに細胞分裂を行ない、再生を繰り返します。しかし脳細胞は、生まれたときに最後の脳細胞分裂を終えているので、生まれた後には脳細胞は分裂して増える機能を失っています。しかし、分裂できない宿命を背負った脳細胞は、その代償機能としてお互いの細胞同士をつなぐ「突起」を増やし、複雑なニューロン・ネットワークを構築する機能を有していることは前述したとおりです。

 つまり、脳細胞が再生するか否かという問題を、「細胞体」と「突起」に分けて考えてみれば、死滅した脳細胞の機能を再生することは、けっして不可能ではないともいえるでしょう。

 私たちの脳の中では毎日、10万~50万個の脳細胞が自動的に死んでいます。しかし、この自然細胞死(脳細胞死)のスピードが加速されないかぎり、たとえば、昨日までできたことが今日になったら突然できなくなる、などということはありません。また、脳梗塞などで手や足が不自由になっても、適切な最高の機能回復運動をすれば、失われた機能は元のように回復してきます。

 この機能回復現象こそが、脳細胞の突起を増やす機能によるものなのです。つまり、生き残った脳細胞がさかんい突起を伸ばし増やすことで、新しいニューロン・ネットワークを構築し、死滅した脳細胞の機能を再生しはじめるのです。

 つまり、脳細胞死のスピードが加速しても、脳の代償機能(ハイヤー・ナーバス・システム)を駆動させ、生き残った脳細胞を活性化させ、この突起を伸ばし、増やす力を増強させることができれば、脳機能は正常に保たれうるというわけです。最高の漢方薬には、このシステムを駆動させるすばらしい作用があったのです。

以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。

目次

プロローグ - ボケずに100歳まで生きるために

第1章 ボケがここまでわかってきた

第2章 脳細胞は自殺する

第3章 老化の原因は「活性酸素」だった

第4章 漢方薬の驚異のボケ防止作用

第5章 病気を未然に防ぐ「養生(ようせい)の法」

第6章 幸せになるための3つの処方箋

エピローグ - ボケを予防する6ヶ条

あとがき-謝辞に代えて

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「脳を守る漢方薬」

エビデンスの解説、紹介
医学博士 大山博行

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