誘導酵素SODの活性が低下すると、脳細胞死のスピードが加速する

誘導酵素SODの活性が低下すると、脳細胞死のスピードが加速する

私たち人間には、生まれたときから悪魔の酸素に対する完璧な防御システムが備わっているということはすでにお話ししました。脳のように活性酸素の発生量がきわめて多い場所では、私たちの生体防御システムも一段と優れたものになっています。

たとえば、スーパーオキシド・ラジカルが大量に発生する脳内では、これを迎え撃つ抗酸化酵素のなかでも最高の位に位置する誘導酵素SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)の活性が、他の臓器や組織に比べてきわめて高くなっており、脳を酸化から守っています。しかし、誘導酵素SODといえども、加齢にともなって少しずつその活性は低下していきます。私たちの体が老化してゆく根底には、こうした加齢にともなうSOD活性の低下があるのです。

「若い」ということは、スーパーオキシド・ラジカルの発生量と誘導酵素SODの活性の力関係を比べたとき、SODのほうに軍配が上がっている状態と見ることができます。たとえ大量のスーパーオキシド・ラジカルが生体内に発生しても、SODの活性が勝って強力であれば、発生したラジカルはすみやかに完全に消去されて、生体の完璧な防御システムの網を破ることは不可能になっているのです。つまり、細胞死の加速は完全に防がれているということになります。

しかし、加齢とともにSODの働きが衰えてくると、体内に発生したスーパーオキシド・ラジカルの力を抑えきれなくなり、徐々に生体防御システムの網をくぐり抜け、ついには帝王・ヒドロキシルラジカルの誕生を許してしまうようになります。そして、細胞死は加速され、死んでゆく細胞のスピードに、新しく再生する細胞のスピードが追いつけなくなり、臓器や組織の老化が進行してしまうということになるわけです。

タバコの煙には、スーパーオキシドなどの活性酸素が含まれていることが確認されています。また、煙に含まれる発ガン物質は私たちの肺を刺激して、さらに大量の活性酸素を発生させます。さらに、タバコの煙の中には一酸化窒素(NO)も含まれていますので、前述したようにスーパーオキシドは一酸化窒素を見つけると、すぐに反応して、帝王・ヒドロキシルラジカルの誕生を招きます。タバコを1本吸うごとに、生体内では、悪魔の酸素中最高の攻撃力を持つといわれる帝王・ヒドロキシルラジカルが誕生しているということになります。

一酸化窒素を介したヒドロキシルラジカルの発生を防ぐには、やはり体内で発生したスーパーオキシドを、誘導酵素SODの力ですみやかに完全に消去してもらい、この反応から発生するヒドロペルオキシド(過酸化水素)はカタラーゼなどの他の抗酸化酵素に消去してもらう以外にありません。ここでも、スーパーオキシドを消去するSODの活性の強さが、老化を防ぐためにいかに重要であるかがよくわかります。

アメリカの国立老年学研究センターが、私たち人間を含む10種類以上のサルの仲間について、SODの活性の強さと最大寿命の関係をまとめました。(87ページ図7)。縦軸はSOD活性の強さ、横軸は最大寿命ですが、このグラフを見ると、それぞれのサルは、ほぼ一直線上に並んでいます。誘導酵素SODの活性の強さが、寿命に深くかかわっていることがよくおわかりだと思います。SODの活性が高ければ、生体内に発生したスーパーオキシドをすみやかに完全に消去できるので、強力な攻撃力を持つヒドロキシルラジカルの発生を抑えて、細胞死のスピードの加速にストップをかけるため、SOD活性が高い種類のサルほど寿命が長いのです。

私たちの脳の中で、悪魔の酸素が大量に発生すれば、老化は進みます。また誘導酵素SODの活性が低下した場合も、老化は進みます。いずれにせよ、脳の生体防御システムが大きく乱れれば、活性酸素が脳の中で猛威を振るい、細胞膜を酸化し、細胞中に過酸化脂質を増やし、脳細胞死のスピードが加速されます。これが脳の老化の実態であり、脳の老化が進めば、物忘れが激しくなり、その先にはアルツハイマー病が待っているかもしれないのです。

いかにSOD活性を高め、脳の老化、ひいてはアルツハイマー病からみを守るべきか、次章ではその核心に入っていくことにしましょう。

以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。

目次

プロローグ - ボケずに100歳まで生きるために

第1章 ボケがここまでわかってきた

第2章 脳細胞は自殺する

第3章 老化の原因は「活性酸素」だった

第4章 漢方薬の驚異のボケ防止作用

第5章 病気を未然に防ぐ「養生(ようせい)の法」

第6章 幸せになるための3つの処方箋

エピローグ - ボケを予防する6ヶ条

あとがき-謝辞に代えて

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エビデンスの解説、紹介
医学博士 大山博行

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