脳細胞は「虚血」に弱い

脳細胞は「虚血」に弱い

私たち人間は、脳と心臓への血流がストップすると、10分間ともたずに死んでしまいます。また、日本人の死因の真実の第一位は血管疾患であり、とくに脳と心臓の血管障害だということはすでにお話ししました。これらの事実は、すべて、生体が虚血(血流が不足した状態)に弱いという言葉で言い表すことができます。そして、虚血に最も弱いのが脳細胞なのです。

脳への血流をストップさせれば、酸素と栄養の供給が断たれ、脳細胞は死んでしまいます。これは誰でも知っていることですが、じつは、脳細胞のなかには、ほんのちょっと血流を止めただけでも死んでしまう、虚血にきわめて弱い細胞があります。アルツハイマー病での脳細胞の脱落が目立つ、大脳皮質や海馬の脳細胞がまさにそうなのです。そしてこの脳細胞たちは、ただ死ぬのではなく、ひじょうに変わった不思議な死に方をします。

脳細胞死の研究では、実験動物としてスナネズミをよく使います。このスナネズミの脳に向かう動脈をクリップなどで止めて、血流をほんの4~5分間中断すると、スナネズミの脳細胞は一時的に活動を停止します。クリップをはずして血流を元に戻してやると、脳細胞は再び活動を再開して生き延びます。ところが、2~3日後にこのスナネズミの脳細胞を顕微鏡で見てみると、生き返ったと思った大脳皮質と海馬の脳細胞たちが、バタバタとたて続けに死にはじめます。そして、なんと7日後には、この部位の脳細胞たちだけが死んでしまっているのです。

この不思議な死に方を「DND(Delayed Neuronal Death)といいます。日本語に訳すと、正確には「遅発性神経細胞壊死」となりますが、わかりやすく言えば「遅発性脳細胞死」のことです。

さらに、この血流をストップさせる時間を10分、20分と長くすると、大脳基底核や大脳辺縁系を構成している脳細胞たち(線条体、中隔、視床、内外側膝状体、黒質など)が、虚血に弱く、死にやすいことが確認されています。そして注目すべきは、これらの脳細胞たちが死んでしまった後の個体は、みんな痴呆化して(ボケて)しまっている事実です。

このスナネズミにも、「脳を守る漢方薬#4」を飲ませつづけていた実験者がいました。そして、前述したDND(遅発性脳細胞死)の実験をしてみたのです。

初めに、この漢方薬を飲んでいたスナネズミの脳の血流を、前述したように4~5分間止めてみました。すると、やはりスナネズミの脳細胞は一時活動を停止しますが、血流を元に戻してやると再び活動を再開します。そして、2~3日後にこのスナネズミの海馬の脳細胞を顕微鏡で見てみると、驚くことに今度は、死にはじめたと思っていた脳細胞たちが、まだまだ元気でピンピンしていたのです。しかも、7日後にはほぼ全滅するだろうと思っていたこの海馬の脳細胞たちのうち、約60パーセントが元気に生き残っていたのです(引用文献④)。

脳の血流が途絶えて死んでしまった脳細胞は二度と再生しません。しかし彼らとて、ただ漫然と死んでいくのではないようです。生きようとして懸命に2~3日は頑張るということを、この実験は示しています。しかし悲しいかな、生命力の弱い脳細胞たちは生き残れず、日を追うごとに順に死んでいってしまうのです。ただしこの実験は、この漢方薬を飲むことで自身の防御システムの力を強めて、生命力をアップしておけば、このように虚血状態に襲われたときでも、半分以上の脳細胞は生き残れることを示唆しています。

以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。

目次

プロローグ - ボケずに100歳まで生きるために

第1章 ボケがここまでわかってきた

第2章 脳細胞は自殺する

第3章 老化の原因は「活性酸素」だった

第4章 漢方薬の驚異のボケ防止作用

第5章 病気を未然に防ぐ「養生(ようせい)の法」

第6章 幸せになるための3つの処方箋

エピローグ - ボケを予防する6ヶ条

あとがき-謝辞に代えて

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「脳を守る漢方薬」

エビデンスの解説、紹介
医学博士 大山博行

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