もう1つ、MMPIと呼ばれる方法があり、これはミネソタ多面的人格目録(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)の略称です。ミネソタ大学のハサウェイ博士(Dr.Hathaway)らによって作られたもので、ミネソタ州民を母集団として作られた質問紙法テストです。個人の人格特徴を多種多様の角度から把握できるようになっています。MMPIの質問紙法は、精選された質問項目に対して、「はい(当てはまる)」、「いいえ(当てはまらない)」、「どちらでもない(わからない)」の3件法で反応するように作られています。
MMPIを実施すれば、一般的健康状態から生活習慣ストレス、家族ストレス、性的ストレスの度合い、さらに宗教にかかわるストレスに至るまで、さまざまな精神障害の種別と程度が評価でき、また対象の人格的・社会的不適応状態の種別と程度も評価できるようになっています。日本語版は、黒田博士らによって改訂版が作られましたが、多種多様な550項目にも及ぶ質問から構成されています。
具体的には、身体面に関しては、脳神経系、心臓血管系、消化器系、呼吸器系、生殖器系、泌尿器系の障害を詳しく検査できるようになっています。精神面に関しては、生活習慣、家族、職業、教育、性、宗教、政治、社会などの各種ストレスに対しての障害の程度、さらに、うつ状態、強迫状態、恐怖症、精神病発症の程度、さらに、サディズム・マゾヒズム傾向、女性の男性化傾向・男性の女性化傾向(俗に言うレズビアン[lesbian]・ホモセクシュアル[homosexual]傾向)の程度まで評価できるようになっています。これらのMultiphasic(多面的)な人格特性の諸側面から、また、さらに詳しく未来の発病を予測することが可能になります。
CMIとMMPIの概要を紹介しましたが、その質問項目や判別法を示すのは割愛します。いずれもきわめて複雑多岐にわたることと、個々の人に即して読み解かなければ意味がないからです。その「読み方」がまさに臨床家のオリジナルであり、そのノウハウで力量を問われることになります。
おそらく現在、前述した3つの東洋医学の手法(おもに漢方薬、鍼灸)の治療効果をよりいっそう高めるために、これらの臨床心理学の手法を用いるところが、私独自の方法論であると自負しています。
臨床心理学的手法と東洋医学の手法をうまく組み合わせて用いれば、職場、学校、家庭などの日常生活の対人関係から生じるストレスをあらかじめ予測することができ、そのストレスに対応する方法を身につけておくことも可能になります。
以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。