肥満に対しても「HNシステム」は働く

肥満に対しても「HNシステム」は働く

プロローグで私は、「HNシステム」のコントロールこそが老化予防の鍵を握っていると述べました。ところがなんと「HNシステム」は老化予防だけではなく、肥満にもかかわっていたのです。ここであらためて、そのからくりを説明することにしましょう。

じつは私たち人間には、生まれたときからすでに肥満に対する生体防御機能が備わっています。すなわち、創造の神は、私たち人類がこの地上で永遠に生きるためには、人間が肥満することは悪いこととして、脳にその情報をインプットさせていたのです。この情報は、古くから研究者の間で「luxus consumption」と呼ばれてたいへん注目されていました。そして、最近になって、その具体的システムの全貌が明らかになってきたのです。

私たちは、食べることによって外界からエネルギーを獲得し、そのエネルギーをうまく利用、消費することによって、生命を維持しています。そして、生体のエネルギー代謝の平衡は、脳(間脳、視床下部)からの命令により、自立的に調節されることによって成り立っています。すなわち、私たちはエネルギーの摂取(食事)と消費(熱産生)とのバランスをうまく保つことにより、生命を維持することができるわけです。簡単に言えば、おなかが空いたら食事をして、満足したらそれ以上は食べない。活動してエネルギーが消費されたら、消費された分だけを食事して、消費された分だけのエネルギーを補給する、ということです。

ところが実際には、そんなにうまくいかず、なんらかの理由で多食になったり、少食になったりします。栄養価の高い食物が豊富にある現代に生きる私たちは、知らず知らずのうちに過食になっている場合が多いのです。その結果、多かれ少なかれ肥満状態にある人間がひじょうに多いということになります。そして、肥満すれば成人病、すなわち高脂血症、高血圧症、動脈硬化症、糖尿病、心臓病、肝臓病などに罹患する危険率もぐっと高くなります。その結果、本来、遺伝子的にプログラムされた長い寿命をまっとうすることができずに、早死にすることになってしまいます。

「luxus consumption」とは「人間が、なんらかの理由で多食(過食)になったとしても、そのときに余分のエネルギーを熱として体外に散逸するシステムが働けば、エネルギーの出納はつねに正常に保たれるから、人間は肥満せずにいられる」という考え方です。そして、現代の最先端の分子細胞医学は、サーモゲニン(thermogenin)と呼ばれる分子量約3万2000のタンパク質を生体内で合成させることにより、このシステムが実際に稼動することを明らかにしたのです。

以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。

目次

プロローグ - ボケずに100歳まで生きるために

第1章 ボケがここまでわかってきた

第2章 脳細胞は自殺する

第3章 老化の原因は「活性酸素」だった

第4章 漢方薬の驚異のボケ防止作用

第5章 病気を未然に防ぐ「養生(ようせい)の法」

第6章 幸せになるための3つの処方箋

エピローグ - ボケを予防する6ヶ条

あとがき-謝辞に代えて

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エビデンスの解説、紹介
医学博士 大山博行

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