老化を促進し、アルツハイマー病などの痴呆を引き起こす最大の原因となるのが活性酸素だということについては、第3章で見てきたとおりです。では、いよいよ、生体の老化(酸化)を食い止める具体的な方法は何か、ということになります。
私たちの体内には、老化の原因となる活性酸素を消去する物質も、同時に存在しています。この物質は、活性酸素による酸化作用を食い止め、抵抗することから「抗酸化剤」と呼ばれています。また、体内に不必要な活性酸素のゴミを掃除するという意味で「スカベンジャー(scavenger)。清掃者」とも呼ばれています。
したがって、まことに単純ながら、結論としては、生体の防御システムをくぐり抜けて発生した活性酸素を、体外から抗酸化剤(スカベンジャー)投与して消去すればよいということになります。私たちの体の中に発生する活性酸素のゴミを、スカベンジャーが1つも残さず掃除できれば、老化は食い止められ、成人病やガンも発症することはありません。逆にスカベンジャーの力が足りなければ、活性酸素の毒性を阻止、軽減できずに、体の老化は進み、成人病に罹患したり、ガンが発症したりして、寿命を延ばすどころか、反対に縮めて早死にしてしまいます。そこで、別のスカベンジャーに協力して助けるような物質を体外から補給することができれば、老化も成人病もガンも防げるというわけです。
ところが、ここで1つ大変重要なことがあります。それは、外から補給するスカベンジャーは、完全に安全なものでなくてはならないということです。なぜなら、老化のスピードを緩めるために活性酸素を消去するということは、病気の治療のために活性酸素を消去することとはまったく意味が違うからです。前者の場合の活性酸素の消去とは、老化を防いで健康を増進するのが目的であり、後者のように病気治療を目的とするのとは、まったく次元が違います。後者はまさに西洋医学の方法論でもあるのですが、往々にして生体への負担をともないます。その毒性ゆえに、さまざまな副作用が生じるケースが少なくありません。
いちばんよいスカベンジャーは自然でピュアーなものということになります。なおかつ、スカベンジャーとしての作用が最も強力なものが最高ということになりますが、そのエッセンスが漢方薬にはほかなりません。
以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。