いまから数年前、ニュージーランドである国際学会が開催されました。この国際学会に招待された研究者は、そうそうたるメンバーで、おそらく世界でもそれぞれ専門領域の研究では最先端を走っている方々です。
この国際学会の内容は、「薬用植物の科学的な検証と展望」というものだったと思います。約1年後、この学会の研究成果を詳細にまとめた書籍が、限定150部くらいで、全世界の最先端の研究施設に配られたそうです。驚いたことに、この本の中には、祖父が大好きだった、あの「脳を守る漢方薬#4」が載っていたのです。
この漢方の煎じ薬には、3つの作用が秘められています。その作用とは、①脳循環改善作用、②脳代謝改善作用、③遅発性脳細胞死改善作用(脳細胞死のスピードを緩める作用)というものです。要するに、加速する脳細胞死のスピードを緩め、生き残っている脳細胞を活性化させるという効果です。
アルツハイマー病とは、簡単に言えば、たくさんの脳細胞が加速度的にどんどん死んでいく病気ですが、残念ながら、現在この脳細胞死を食い止める方法はまだ見つかっていません。さらに死んでしまった脳細胞は再生しません。そこで考えられるのは、生き残った脳細胞を活性化させて、死んだ脳細胞の働きをカバーするという方法です。じつは、この「もう1つの最高の漢方薬」の①と②の作用が、まさにこれなのです。
①の「脳循環改善作用」とは、脳内の血流をスムーズにする作用のことです。この漢方薬は脳の血管を拡げる作用と、赤血球が動脈硬化などで狭くなった血管内を通過するときに形を変える能力、血液変形能力を高める作用を持っています。それによって、脳の血流量を増やし、血液の流れを改善することで脳細胞への酸素と栄養の供給を促し、脳の働きを活発にする作用があります(引用文献④)。
②の「脳代謝最善作用」とは、脳細胞のエネルギー代謝をよくして、脳細胞の働きを活発にする作用のことです。脳細胞は、血液中のブドウ糖を唯一のエネルギー源としています。この漢方薬には、脳細胞のブドウ糖の取り込みをよくして、エネルギーの産生を促し、脳の働きを活発にする作用があるのです(引用文献④)。
この2つの作用は、脳の全域に広く作用することがわかっています。アルツハイマー病では大脳皮質と海馬の血流量がとくに減少していますし、脳血管性痴呆の場合は、その原因が脳梗塞の部位と数によって決まるので、まず血流を改善させて、エネルギー代謝を活発にすることが最もいい治療になります。
ですから、この「脳を守る漢方薬#4」は、日本人の老年期痴呆の70パーセントにかかわる、最も多い痴呆症とされている「脳血管性痴呆」に、とくに大きな効果が期待できるものといえるでしょう。
次に、この漢方薬の持つもう一つの重要な作用である③の遅発性脳細胞死改善作用について説明しましょう。
以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。