病気は「未病」のうちに治すのがベストであること、また発病のきっかけはストレスであることがおわかりいただけたと思います。生きているかぎり、人間は誰でもストレスを受けます。しかし、同じストレスでも、ストレスに対する反応の仕方に個人差があるのはどういうわけなのでしょう。
ある人は、ストレスを受けて不安に陥り、病気になり、死んでしまいます。またある人は、ストレスをエネルギーに変換して、自分の能力を高めるような凄いことをやってしまう人もいます。プラスに転化しないまでも、ストレスを受けて不安になるだけですむ人と、発病する人、さらには心臓停止にまで至ってしまう人とでは、たいへんな違いです。
ある人が、強力なストレスを受けて心臓停止で死んだとします。この人はおそらく、平素からものすごくストレスに弱い人間だったのでしょう。しかし、この人が、ストレスを受けるまえに、自分はストレスにひどく弱い人間だとわかっていたらどうでしょう。あるいは、死を免れたかもしれません。
ストレスをうまく処理するためには、ストレスの種類、性質を知ることと、自分はどのようなストレスに弱く、またどのように反応するのか、といった個人的なストレスに対する反応パターンを知ることがきわめて重要になってきます。もし事前に自分の弱点がわかっていれば、これに備えることも可能になり、発病を未然に防ぐことも可能になるはずです。
たとえばストレスを受けると、ある人は心臓に過大な負担をかけて反応します。またある人は、胃や十二指腸潰瘍などの消化器系の潰瘍で反応します。さらにもっとひどい場合には、潰瘍性大腸炎などで反応してしまう人もいます。もう少し軽い消化器系の反応としては、下痢と便秘とをともなう過敏性腸症候群と食道の痙攣があります。
また、痛みというものは生体の警告信号と考えられますが、おおむねストレス反応とみることができます。つまり、ストレスが頭痛や背中の痛み、脚の痛みやある種の関節症状として現われるのです。
精神面の異常が先に出る人では、不安や感情の混乱状態、恐怖感の強い神経症や抑うつ状態、うつ病などが現われてきます。さらに不眠症も、多くはストレス反応からきていることが多いのです。慢性疲労もストレス反応の1つと考えられます。
このように、ストレスに対する強さ・弱さ、反応のパターンは人によって異なります。が、ただ1つ共通しているのは、ストレスを受けると、誰しもが「不安」や「恐怖」をともなった「緊張感」を感じることです。この緊張感からの解放こそが、発病を未然に防ぐ鍵となります。
種々のストレスから生じる生体の内部環境の歪みを整える方法には、3つの手法があります。
まず第一に「緊張を上手にコントロールする方法」を身につけ、第二に、自分の「生体防御システムの弱点=体質」を知り、そして第3に、自分の「ストレスに対する反応パターン」を知る手法です。これらを理解すれば、私たちは誰でも日常生活で直面する多くのストレスにうまく対応処理できるようになれるのです。「幸せを約束する3つの処方箋」というわけです。以下、それぞれについて説明していきます。
以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。