第4のシステム、「免疫防御システム」とは、生まれつき自分の体内にあるものと、そうでないものを識別して、そうでない異物を体外へ排除することによって生体を防御するシステムです。もちろん、このシステムも原則的には不随意的なものです。
私たちの体には、生まれつき自分の体にあったもの(自己)と、そうでないもの(非自己)を識別する能力が備わっています。そして、非自己である異物が生体内に侵入すると、すぐにそれを識別して排除するシステムが働きます。また、生体内に侵入したものが非自己であると判断すると、生体は自動的に「抗体」を作って、その非自己の性質と防御方法を記憶します。そして再び、同じ非自己が生体に侵入してくると、生体は自動的に、前に記憶した抗体を駆動させて、再侵入した非自己を排除しようとします。この抗体と結びつく非自己を「抗原」といい、抗原と抗体が結びつく反応を「抗原抗体反応」、または「免疫反応」と呼んでいます。
この免疫反応を応用したものが予防接種です。健康な人間の生体防御機能以下に減弱し、不活性化させたウイルスをあらかじめ接種しておくと、生体は抗体を作り、このウイルスの防御方法を記憶してしまうので、感染を受けても発病が抑えられるというわけです。
健康な人間であれば、生まれつき自分の体にあったもの(自己)に対しては、原則として抗体を作りません。ところが、不自然な生活環境のなかで、つい無理をしたり、体を休めることを忘れ、不摂生な乱暴な生活を続けている人間、つまり「未病」の状態にある人間では、この完璧な免疫防御システムにわずかな乱れが生じてしまいます。そうすると、生まれつき自分の体にあった細胞や生体内タンパク質を、うっかり非自己である異物と錯覚してしまい、この自己に対して抗体を作ってしまうことがあるのです。そうなると、この自己の抗体は、自己の抗原(細胞やタンパク質)と抗原抗体反応を起こしてしまいます。この抗原抗体反応が「自己免疫」と呼ばれるもので、その結果引き起こされる怖い病気を「自己免疫疾患」と呼んでいます。よく知られているものに慢性関節リウマチや膠原病などがあります。
健康な人間では起こりえないはずの自分の体の組織や細胞の構成成分に対して、免疫反応が起こってしまった結果、引き起こされる病気の典型が慢性関節リウマチです。リウマチ患者は全国でおよそ50万人くらいいると推定されています。はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、その根底にはこの免疫防御システムの大きな乱れが存在しているのは疑いのないところです。
以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。