脳血管性痴呆とアルツハイマー病を比較してみましょう。最初に脳血管性痴呆について見ていくことにします。
脳血管性痴呆とは、脳に小さな梗塞がたくさんできるために起きるものです。梗塞とは、動脈が詰まって、そこから先の組織に血液が流れなくなり、酸素や栄養分を摂取できないために脳細胞が死んでしまう病状をいいます。そして、血管を詰まらせるもっとも大きな原因が血栓です。血栓とは、血管の中で血液が凝固したものです。この血栓は脳の動脈血管でも生じるのですが、じつは、脳以外の他の臓器から運ばれてきたものがひじょうに多いのです。
つまり、脳血管性痴呆が引き起こされるのは、脳以外の臓器の血管の疾患に原因や誘因があるわけです。たとえば血栓の原因は心臓病、高血圧症、動脈硬化症、糖尿病、肝臓病、腎臓病、ガンなどにともなう血管の疾患があげられますが、これらの疾患ほとんどが生活習慣病ともいえる成人病にほかなりません。このことから、脳血管性痴呆に関しては、脳の老化そのものが原因になると考えるよりも、脳以外の臓器が老化や病気によって機能が障害され、脳の完全な機能を支えきれなくなって発病するということがおわかりだと思います。
原因のわからないアルツハイマー病に対して、脳血管性痴呆は、いま述べたように脳梗塞などで脳細胞が死ぬことによって起こる病気なので、ボケ方は、梗塞の部分と数によって決まります。したがって、脳血管性痴呆は新たな脳梗塞が発症しないかぎり症状が悪化せず、逆に、梗塞が生じるたびに段階的に悪化する痴呆とされています。また逆に言えば、脳の動脈硬化を抑えれば、脳血管性痴呆は予防できるということになります。
以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。