このようなときこそ、真っ先に実施しなくてはいけないのが東洋医学的手法であり、後に述べる「養生の法」です。ハイヤー・ナーバス・システム(HNシステム)をすみやかに駆動させ、生体の分子レベルの病気を治し、低下した生命力を復活させ、自分自身が本来持っている完璧な生体防御システムを取り戻すことが必要なのです。そうすれば、病気側に向かっていた生命の流れが、自然に健康の側に向かい、さらに健康を増進する方向に向かいます。
「東洋医学的手法」を、私は、次の3つに分類しています。
(1)養生医学を用いる法 健康を維持・増進させる法で、これには、食事療法、気功(呼吸療法、運動療法)、あんま、マッサージ、指圧、房中術(セックス療法)などがあります。食事療法、呼吸療法、運動療法、マッサージ療法は西洋医学のそれと共通点が多く、いずれも悪い習慣を改善することを目的としています。
(2)経絡医学を用いる法 いわゆる鍼灸治療。
(3)薬物医学を用いる法 薬草、漢方薬による治療。
また、私の提唱する「養生」ですが、これは文字どおり「生命を養う」という意味で用いられています。養生の「生」とは生命の「生」であり、当然「せい」と発音します。すなわち「養生」は「ようせい」と読みます。
「養生」という言葉は、一般的にあまり馴染みのない言葉かもしれません。とくに日本人には、「養生」というと、病後に体力の回復を図ることの意味で理解され、「ようじょう」と読む方が多いようです。しかし中国では、「養生」というと、古来より「摂生」の意味でとらえることが多く、ともすれば度を越しがちな食欲や性欲をほどほどに抑えて、身体を守り、健康で長生きできるようにすることの意味で理解しています。
「養生の法」とは、「みずからの意志で、みずからの命を養う法」だとご理解ください。しかも私の提唱する「養生」、つまり「生命を養う」とは、単なる健康にとどまらず、みずからの意志で健康を増進させ、生命力を養い高めて「完全なる健康」を手に入れることを意味しています。「完全なる健康」とは、155ページで述べたWHO(世界保健機構)の「健康」の定義が完全に当てはまる健康状態を指しています。毎日を生き生きと楽しく、快適に生活している状態、いつも元気でのびのびと喜んで行動している状態、つまり、ベスト・オブ・ベストの状態です。
以上、岡山大学 医学博士 大山博行著 「脳を守る漢方薬」より引用
詳しくは、光文社カッパブックス「脳を守る漢方薬」を御一読ください。